リアル店舗の店員がバーチャル上で実力発揮

 HIKKYは5G時代を見据え、すでにVR・ARのソリューション開発を進めている。コミックブイケットの前倒し開催を実現できたのは、「バーチャルマーケット」というバーチャルな展示即売イベントを18~19年に3回開催し、実績を積んできたことがある。19年9月に開催した「バーチャルマーケット3」には、セブン&アイ・ホールディングス、パナソニック、KDDIなどがスポンサーとして参画。8日間で来訪者70万人を集めた。

 バーチャル空間だけでなく、リアル店舗と融合した小売りのトライアルも行われた。例えばSHIBUYA109のアパレルショップ「WEGO」の実店舗と、バーチャルマーケット内のVR会場「ネオ渋谷-Night」を結びつけた取り組みでは、実店舗の来店客をバーチャル空間の店員が接客。志願して参加したスタッフの中には、長期入院中で店頭に立つことができなくなっていた店員もおり、「病室からでも接客ができるとは」と喜んでいたという。

 19年の時点ではピンとこなかったかもしれないが、今や新型コロナウイルスで状況は一変した。外出自粛やテレワークの推奨などが行われている現在では、バーチャルでの接客も必要なソリューションとなりつつある。20年4月29日から5月10日まで開催された「バーチャルマーケット4」では、バーチャル空間「パラリアルトーキョー」を舞台に、35社が出店。ソフトバンク、セブン&アイ・ホールディングス、パナソニック、アウディジャパンなど、多種多様な企業が集結した。

「バーチャルマーケット4」は20年4月29日から5月10日まで開催された(画像提供/VR法人HIKKY)
「バーチャルマーケット4」は20年4月29日から5月10日まで開催された(画像提供/VR法人HIKKY)
「パラリアルトーキョー」では、東京駅や東京スカイツリー、東京タワーなど主要なランドマークがリアルに再現された(画像提供/VR法人HIKKY)
「パラリアルトーキョー」では、東京駅や東京スカイツリー、東京タワーなど主要なランドマークがリアルに再現された(画像提供/VR法人HIKKY)

 パラリアルトーキョーの入り口は羽田空港。そこから東京に実在するランドマークを巡る。アウディジャパンは街中のあちこちに新型EV「e-tron」の3Dモデリングデータを展示。来場者がクルマに触れると、アウディの展示ブースにワープする。ブースには、アウディがレーシングサーキットで実施しているドライビングイベントでインストラクターを務めるクルマの専門家を配置。アバターを通じてコミュニケーションし、e-tronの特徴を伝える。バーチャルな試乗体験もできるという。

 緊急事態宣言の発出を受け、外出を控えている消費者がどっと集まる可能性があり、VR法人HIKKYは100万人の来場を想定。企業側の反応も以前とは大きく変わり、「リアルなイベントが中止になった企業からの問い合わせが増えている」(舟越氏)。同氏は「インターネットの黎明(れいめい)期はウェブサイトなんて作る意味あるの?と企業側から疑問の声が聞かれた。しかし今はウェブサイトが不可欠になっている。VRやARも同じ道を歩むはずだ」と将来を見据える。出展企業の1社であるソフトバンクは「今回のような事態を想定していたわけではないが、VRによるコミュニケーション文化がより加速し、確立していくと思う」と期待を寄せている。

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