百貨店ビジネスが厳しい中、三越伊勢丹のデジタル新規事業が伸び、2020年度に約100億円の売り上げを見込んでいる。しかし、「今の成功は無数の失敗の上に成り立っている」と同社の新規事業を統括するデジタル事業グループ長の北川竜也氏は言う。これまでの試行錯誤の経緯を見てみよう。

 新規事業や顧客創造、顧客関係強化など、マーケティング領域でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が急務となっている。どの企業にとっても未知の領域だけに、担当者からすれば、成功事例をまねたいところ。しかし、成功といえる事例自体はまだ少なく、どの段階で成功とするのかも難しい。

 であれば、失敗から学んでみるのはどうだろう。本特集「マーケDX 失敗からの逆転法」では、果敢にマーケDXに挑戦した先人たちの失敗と、それをどのように生かしていったかを深掘りしていく。“挑戦することを恐れるな。挑戦しないことを恐れろ”――。正解が分からない時代だからこそ、失敗がナイストライとされ、その経験が重宝される文化が求められているのだ。

今の成功は無数の失敗の上に成り立っている

 百貨店ビジネスが厳しい状況にある中、三越伊勢丹が手掛けるデジタル新規事業が伸長している。中でも好調なのが、19年にスタートした化粧品ECサイト「meeco(ミーコ)」と、18年にスタートした食品定期宅配サービス「ISETAN DOOR(イセタンドア)」だ。しかし、「今の成功は無数の失敗の上に成り立っている」と同社の新規事業を統括するデジタル事業グループ長の北川竜也氏はいう。

三越伊勢丹の新規事業を統括するデジタル事業グループ長兼ふるさと納税部部長の北川竜也氏。大学卒業後、国連の活動を支援するNGO(非政府組織)で国際法廷設立などのプロジェクトに従事し、日本に帰国後はスコラ・コンサルトにて企業の組織活性化を支援。その後、創業まもないクオンタムリープに参画して企業の新事業創出支援に携わり、自らもアレックスを創業するなど、異色の経歴の持ち主

 北川氏が三越伊勢丹に入社した13年は、DXという言葉がまだ一般的ではなく、ITやWebという言葉が世の中でよく使われていた時期。それらを活用し、百貨店が次に取り組むべきテーマを見つけるのが北川氏のミッションだった。

 「実験部隊という位置付けで、新たな仕掛けを次々に社内に投げ込むのが自分の役割だった。百貨店がこれまでやってこなかった領域にあえて挑戦しろというミッションを当時の経営陣からいただいていたこともあり、失敗も含めた試行錯誤の連続だった」(北川氏)。

 AI(人工知能)を使って商品をレコメンドしたり、スマホだけで店舗に集客したり、アプリで館内のナビゲーションを行ったりなど、店舗を軸にデジタルを活用してさまざまな取り組みを実施した。

 最も大きな失敗は、多くの取り組みが一過性に終わってしまったことだという。中でも代表的な失敗例の1つが、米国発のソーシャルコマースサービス「FANCY(ファンシー)」に出店したこと。「13年当時、FANCYが世界を席巻していた。米国西海岸などにいるセレブリティーたちがキュレーターとなってお気に入りの商品を紹介するとそれがタイムラインに流れ、どんどん売れていた。ここに日本の製品を出したら世界中の人たちに売れるのではと思って日本での提携先第1号として出店したら、想定したよりも反応が鈍く、全くコストに見合わなかった」(同)。

続きを読む 2/2 なぜ一過性の取り組みに終わってしまったのか

この記事はシリーズ「日経クロストレンド」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。