withコロナの停滞感を打ち破り、新たなビジネスを生み出そうとする企業はどこか。日経クロストレンドは独自に「未来の市場をつくる100社 2021年版」を選出した。もはや単に新しい、面白いだけでは通用しない。社会の変化に対応し、新たな消費トレンドをつくる挑戦者のリストを一挙公開する。

「これからの5~10年で起きるのが必然だったデジタル化を、強制的に1~2年で進めないといけなくなった。これを逃せば日本が浮上することは二度とない。スタートアップにも大企業にとってもラストチャンスだ」。そう話すのは、米投資育成会社WiL(ウィル、カリフォルニア州)共同創業者ジェネラルパートナーの松本真尚氏だ。

松本氏は、1999年にiモード関連のスタートアップを設立し、川邊健太郎氏(現在はZホールディングス、ヤフー社長)らのモバイル系ベンチャー「電脳隊」と合流。2000年にヤフーへ売却した経歴を持つ。「僕らは99年に起業したが、同じかそれ以上の波が来ている」(松本氏)。当時は世界のインターネット市場に日本は出遅れていたが、モバイルという新トレンドに乗ることで現在のモバイル活用につながる日本発の技術やサービスを多数生み出した。
「マストハブ」が求められる
新型コロナウイルス感染症が拡大し、あらゆる企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、社会の変化に待ったなしで対応せざるを得ない。だからこそ「採用する側の企業にとっては、実績がない、従来の切り替えコストがかかるのでは、といった話をしている暇はない。正しい方向性で新しいものを生み出しているスタートアップには大きなチャンスだ」と松本氏は話す。
コロナ下でもスタートアップに対する投資の勢いは落ちていない。M&A助言のレコフ(東京・千代田)によると、4~11月の国内企業によるスタートアップへの投資件数は692件で、前年同期比で6件減ったものの、ほぼ横ばいの水準を維持している。

では99年当時の「モバイル」に相当する、2021年に注目を集めるキーワードは何か。松本氏は「社会の負の部分、ペイン(痛み)を解決するのがスタートアップの役割だ」と説く。さらには「ナイストゥーハブ(あったらいいね)ではなく、マストハブ(必須)でなければならない」(松本氏)という。技術やサービスの中身が単に新しい、面白いだけでなく本質的でないといけないということだ。
例えば、テレワークが浸透し、自宅から業務をせざるを得ない状況下ではさまざまな業種をこなすためのサービスが広がることは間違いない。外出自粛が広がる中では、店舗とネットを融合するOMO(Online Merges with Offline)などマーケティングDXも加速する。健康や医療については、ライフスタイルの変化にも対応する必要がある。
日経クロストレンドは各界識者の意見を参考にして、今後注目すべきジャンルとして「マーケDX」「働き方・教育」「健康・医療」「生活・金融」「エンタメ」「フードテック」「モビリティー」「SDGs(持続可能な開発目標)・ESG(環境・社会・企業統治)」の8つに絞り、21年以降に飛躍する「未来の市場をつくる100社」を選出した。新型コロナウイルス感染症拡大にともなう経済の停滞が懸念される中、その急激な社会の変化に対応し、斬新かつ有望な新市場を生み出しているかを重視した。ここにそのリストを一挙公開する。なお市場名(キーワード)は日経クロストレンドが各社の特徴などを基に、独自に名付けたものである。(次ページから100社リストを公開)
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