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 「接待を伴う飲食店、バーやナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスへの出入りは、今後とも控えていただきますようにお願いいたします」

 5月14日、全国39県の緊急事態宣言解除を発表した記者会見で、安倍首相は解除地域の国民に向けてこう訴えかけた。いずれも新型コロナウイルスの感染リスクが高まる、いわゆる「3密」が起きやすい場所だ。

休館が続く横浜市内のミニシアター

 飲食店やホテル、航空など人の移動やコミュニケーションを前提にしたビジネスは今、窮地に追いやられている。それは音楽や映画、演劇などの世界も同じ。アーティストや作品と身近にふれ合うことができ、デジタル空間とは違ったリアルな関係性を持てるライブハウスや劇場が、高リスクの場所とみなされるようになった。小規模な事業者も多いため長引く営業自粛に耐えるのも難しく、やむなく閉鎖に追い込まれる施設も出てきている。

 ぴあ総研が3月に出した新型コロナのライブ・エンタテインメント産業への影響についての調査では、5月末までにコンサート、演劇、スポーツなどのイベントの中止や延期により約3300億円の入場料金が失われると推計している。これは同分野の2019年の市場規模9000億円の3分の1以上に相当する。

 苦しいのは、安倍首相の言葉が示すように、経済活動が正常化に向かう中でも、ウイルスの脅威が残る限り以前のようなスタイルに戻ることが難しいことだ。しかし、このままなすすべもなく淘汰の波に飲み込まれるわけではない。

 芸術や文化の土台となってきた「箱」を救おうと、クラウドファンディングなど新たな手法を通じたファンやアーティストの支援の輪は日本全体に広がりつつある。ネットによるコンテンツ配信、絵画のネット販売など、新たなモデルに挑む動き出てきた。窮地から生まれつつあるカルチャーの新たな生態系。その姿を探った。

連載ラインアップ

・toeや東京事変も動いた 逆境ライブハウスに3万7000の支援(5月21日公開)
・ミニシアターが「ネット配信」 逆境から生まれる自立への道(5月22日公開)
・フェア中止で打撃 旧態依然のアート市場は変われるか(5月25日公開)
・「支援でなく担い手に」スマイルズ遠山CEOが語るアートに踏み込む理由(5月26日公開)
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