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 ソフトバンクグループ(SBG)が虎の子の資産を切り売りし、手元資金の確保を急いでいる。中国・アリババ集団の株式を売却して1兆2500億円の現金を調達したのに続き、21日には通信子会社ソフトバンク(SB)の株式2億4000万株の売却を発表。譲渡額は3102億円だという。

 モノ言う株主として知られる米エリオット・マネジメントなどからの突き上げもあり、今後の自社株買いに2兆5000億円を使う予定。多額の社債返還が控えていることもあって、SBGは4兆5000億円の資産売却の方針を示している。

 SB株の売却はこうした資産売却の一環だが、SMBC日興証券の菊池悟アナリストは「(SBGの)経営を支える柱が細くなっていく」と危惧する。アリババ株は含み益はあるものの無配が続いている。一方、SB株は高い配当が得られる、『金の卵を生むガチョウ』だ。

 SBの2021年3月期の配当は通年で1株当たり86円と前期に比べて1円増配する見通しで、従来の保有株数で計算すれば2737億円の配当収入がある予定だった。ただ、今回の売却で配当収入は206億円減少することになる。世界の成長企業への資金流入をけん引してきたSBGの懐事情の悪化は、スタートアップに成長戦略の見直しを迫る。

ビジョンファンド2号は自社単独に

 「残りの1兆数千億円のお金は7%の固定配当の資金などに取ってある」「(ソフトバンク・ビジョン・ファンドの1号ファンドにおける)新規の投資は打ち止め」――。

 SBGが18日に開いた20年3月期の決算発表会見で、孫正義会長兼社長は、10兆円を運用するファンドとして同社の成長をけん引してきた「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」で投資を抑制する方針を示した。SVFの2号を1号と同規模で組成する考えを明らかにした1年前とは対照的な会見となった。

 20年3月期の連結最終損失(国際会計基準)は9615億円におよび(前の期は1兆4111億円の黒字)、20年1~3月期に限ってみれば1兆4381億円の赤字と急転直下だった。シェアオフィス「ウィーワーク」運営の米ウィーカンパニーの価値が19年12月の73億ドル(約7900億円)から29億ドル(約3100億円)に下落するなど出資先の企業価値が目減りした。3月には出資先の英衛星通信会社ワンウェブの経営破綻もあった。

20年2月の決算会見では米通信会社の合併の進展や市況の改善で「潮目が変わった」と強気の発言をしていたが……(写真:アフロ)

 1号ファンドの過去3年間の運用実績がマイナス1000億円になるなど投資環境が悪化する中、2号ファンドの組成については、当初予定していたパートナーに対する出資の要請は控え、自社単独で資金を投じる戦略に切り替えたと孫社長は明かす。「(SVF2号の)資金は大丈夫かという質問は受けるが、大丈夫ではないというのが正直な答え」と本音を吐露した。