全2922文字

 「利益はいつ出るの?」「毎月使っているお金はどれくらい?」――。

 留学生向けにオンライン学習や就職活動などのキャリア支援サービスを提供するスタートアップ企業Linc(リンク、東京・千代田)の仲思遥CEO(最高経営責任者)は、ベンチャーキャピタル(VC)から寄せられる質問が2年前の資金調達時と大きく変わったことに気づいた。

 2018年に初めて調達したときは、貸し手が競うようにスタートアップへ投資する「出資バブル」の時代だった。「起業家が“ロマンと夢”を持っていれば億単位の金額がついた。だが今は違う。求められるのは“ロマンとソロバン”だ」と仲CEOは苦笑する。

スタートアップにも足元の業績が問われる(写真:PIXTA)

 ここ数年のスタートアップ業界は、事業の初期段階に販促費を大胆に投入して知名度を上げ、しばらく赤字が続いても利用者を増やして市場シェアを広げることを優先する「Jカーブ」経営が主流だった。

 だが、新型コロナウイルスの感染拡大が世界の経済に急ブレーキをかけたことで事態が急変。投資家は損失を回避すべく、足元の業績や黒字化のメドといった短期的な指標を重視する姿勢に変わった。仲CEOは大手のVCを10社回ったが、結局色よい返事は1つももらえなかった。

 仲CEOは中国北東部の瀋陽出身で、高校卒業後に慶応義塾大学に留学した経歴を持つ。留学生向けのサポートが薄い就職活動などに苦労した自身の経験から、留学生が日本でキャリアアップしていくためのサポート事業を手掛けるLincを16年に起業した。

 その前には野村証券の投資銀行部門でリクルートホールディングスなどのIPO(新規上場)に携わった経験を持つ。資金の受け手と出し手、両面の視点を持ち合わせた起業家だ。加えて「海外人材」や「オンライン教育」といった注目分野で事業を展開しており、2年前は独立系VCのジェネシア・ベンチャーズ(東京・港)やシンガポールに拠点を置くVCのBEENEXTから順調に1億円を調達。その後もサービス利用者を増やしていた。