環境や社会課題の解決に調達資金を充てるグリーンボンド(環境債)やソーシャルボンド(社会貢献債)といったESG(環境、社会、ガバナンス)債の発行が急増している。中でも、使い勝手の良さで注目を集めているのがサステナビリティ・リンク・ボンドだ。

使用電力を全て再生可能エネルギーで賄う埼玉県上尾市のイオンモール上尾(写真:イオンモール)
使用電力を全て再生可能エネルギーで賄う埼玉県上尾市のイオンモール上尾(写真:イオンモール)

 ESG債の発行が世界で急増している。米ムーディーズ・インベスターズ・サービスによると、2021年のESG債の発行額は前年比59%増の8500億ドル(約97兆円)と過去最高額に達する見通しだ。

 イオンモールが2021年11月に発行したのは「サステナビリティ・リンク・ボンド」と呼ぶESG債。年限は5年で、発行額は200億円、利率は0.16%である。格付投資情報センターから、国際資本市場協会(ICMA)のサステナビリティ・リンク・ボンド原則に適合しているとセカンドオピニオンを取得した。11月19日時点で11の機関投資家が投資を表明している。

 グリーンボンドは調達資金の使途を環境改善効果のある事業などに限定して発行される。これに対して、サステナビリティ・リンク・ボンドは調達資金を必ずしも特定の使途に限定する必要がなく、ESG目標の達成度合いと発行条件が連動するのが特徴である。グリーンボンドに比べて使い勝手が良いため、発行する企業が相次いでいる。21年には野村総合研究所やANAホールディングス、アシックスなどが発行している。

 イオンモール財経本部財経統括部長の横井栄一氏は、「ESG債に投資を振り向ける機関投資家の潮流があり、ESG債は単なる資金調達手段ではなくESGの取り組みのアピールになる。調達資金をいろいろな使途に充てられるサステナビリティ・リンク・ボンドがいいと判断した」と話す。

150拠点を「CO2フリー」に

 同社は、25年度末までに国内に約150拠点ある全てのイオンモールで使用する電力を再生可能エネルギーに切り替え、「CO2フリー」にすることを目指している。今回のサステナビリティ・リンク・ボンドでは、これを目標に設定した。目標を達成できなかった場合、発行額の0.2%に相当する約4000万円を脱炭素に資する活動を実施している公益財団法人に寄付する。

 他社が発行しているサステナビリティ・リンク・ボンドの中には、目標未達の場合に利率を上げるものもある。「利率が上がると投資家が得をすることになり、当社とベクトルが違ってしまう。その上、仕組み債として取り扱われ、投資してもらいにくくなる」(横井氏)

 イオンモールにはESG債での成功体験がある。20年9月、環境に配慮した商業施設の建設や、テナントの事業継続支援などの新型コロナウイルス対策に調達資金を充てるサステナビリティボンドを起債した。5年債と7年債合わせて300億円を発行したところ、発行額に対して1.25~2.24倍の応募があった。19の機関投資家が投資を表明し、イオンモールのESGの取り組みが広く知られることになった。

 投資意欲が旺盛な状態が続けば、低い利率でも投資してもらえる期待もある。イオンモールは今後もESGを中心に資金調達を考えていく方針だという。

 活気づくESG債市場だが、環境や社会課題の解決につながっているか、プロジェクトに対する評価の目は厳しくなりつつある。他社との差異化も意識し、ESG債を設計することが欠かせなくなってきた。

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