世界人口が50年に100億人に迫る中、タンパク源として水産物への注目が高まっている。しかし国連食糧農業機関(FAO)のデータによれば、水産資源の34.2%が乱獲により過剰漁獲され、持続可能ではない状態にある。環境や社会に配慮して生産された持続可能な水産物「サステナブル・シーフード」が必要とされるゆえんだ。

 欧米ではサステナブル・シーフードの市場が急速に広まっている。例えば、米ウォルマートと同社会員制スーパーのサムズ・クラブが扱う天然魚は、2019年に98%がサステナブル認証を取得したものか、認証取得を目指して漁業改善プロジェクト(FIP)を進める魚に置き換わった。養殖魚も99%が持続可能な水産方針に基づいて調達している。

ウォルマートの商品棚に並ぶサステナブル・シーフード(写真:ウォルマート)
ウォルマートの商品棚に並ぶサステナブル・シーフード(写真:ウォルマート)

 しかし、水産大国・日本ではサステナブルに取る漁業が広がっていない。そもそも日本では水産業自体が衰退しつつある。1982年に2兆9772億円だった生産額は2018年に1兆5579億円まで落ち込んだ。サステナブルを鍵に成長産業として伸ばしてきた欧米とは真逆の動きだ。

水産改革が始まった日本

 事態を打破するため国は水産改革に踏み切った。70年ぶりに抜本改正された漁業法が20年12月に施行された。改正法の肝は資源管理だ。従来、船の大きさや漁具に規制をかけてきたが、今後は魚種ごとに「漁獲可能量(TAC)」を定め、船ごとに「漁獲割り当て(IQ)」を決める。

 日本で漁獲される約3700種の魚のうち、これまでTACを定めてきたのはサンマやサバなど8種だけ。この8種で日本の全漁獲量の6割を占める。今後は対象種を全漁獲量の8割に引き上げる。IQでの資源管理に移れば、船ごとの漁獲上限が決まるため、早取り競争が起きず乱獲を防げる。水産業のデジタル・トランスフォーメーションも推進する。漁獲データや海況情報が収集しやすくなり、資源管理が円滑になる。

 水産改革で他に議論されている点は、魚1匹ごとに漁獲番号を付ける制度の導入だ。IUU(違法・無報告・無規制)漁業による魚ではないことを証明するため、漁獲物ごとに13桁の漁獲番号を付け、どこでいつ取れた魚か追跡できるようにする。違法漁業の恐れが高いナマコやアワビなどの魚種から導入される予定だ。

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