マグロで世界初のMSC認証

 この動きを先取りする日本企業も現れた。宮城県気仙沼市の臼福本店は20年8月、タイセイヨウクロマグロの漁業で世界初のMSC(海洋管理協議会)漁業認証を取得した。クロマグロを資源管理しながら適切に取ってきた同社は、認証取得によってIUUに関与していないことを証明したいと考えた。

臼福本店(宮城県気仙沼市)は世界で初めて、タイセイヨウクロマグロでMSC漁業認証を取得した。マグロ1匹ごとに来歴を示す電子タグも付けて出荷している(写真:臼福本店)
臼福本店(宮城県気仙沼市)は世界で初めて、タイセイヨウクロマグロでMSC漁業認証を取得した。マグロ1匹ごとに来歴を示す電子タグも付けて出荷している(写真:臼福本店)

 さらに同社は、すべてのクロマグロに通し番号入りの電子タグを付け、履歴を追えるようにしている。「来歴が分かる魚を提供することで、漁業資源のサステナビリティに貢献し、履歴が不透明なマグロと差別化できる」と臼井壯太朗社長は話す。MSC認証のクロマグロの売り上げは2年後に約2億円を見込む。

 消費市場に影響を与えるインフルエンサーも現れた。ミシュラン一つ星のフレンチレストラン「シンシア」のオーナーシェフ、石井真介氏だ。20年9月、サステナブル・シーフードを主な食材にする店「シンシアブルー」を東京・原宿に開いた。メニューには宮城県産のASC(水産養殖管理協議会)認証のギンザケや千葉県産のFIPのスズキなどに加え、神奈川県の未利用魚オアカムロが並ぶ。未利用魚の活用も、資源を守るサステナブルな活動だ。石井氏は「この店が消費者を引っ張り、他の店をけん引する道しるべになれば」と話す。21年にはシンシアブルーの年商を1億円にしたい考えだ。

 日本の水産現場に開いた風穴。サステナブル・シーフードをてこに、水産大国の復権が待たれている。

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