「社会」が重要なファクターに

 一方、社会を強みに着実にランクアップしているのがスターバックスだ。20年に総合7位、21年3位、そして今年は2位と、トップをうかがうところまで来た。昨年に続き社会のイメージスコアで1位を獲得したほか、環境が4位、ガバナンスが5位と昨年から1つずつ順位を上げた。

 スターバックスと言えば、プラスチック製ストローの全廃をいち早く宣言し、環境でブランド力を一気に高めた。その後は同社の働きやすい職場づくりや、従業員の成長を後押しする企業風土、地域との共生など、社会の側面が注目を集めている。

 日本政策投資銀行設備投資研究所の竹ケ原啓介副所長は、「ESGブランド指数を決める要素として社会のスコアが大きなウエートを持ち始めている。働き方改革や人的資本の活用などに積極的に取り組んでいる企業が今後、総合ランキングでも上位に来る可能性が高い」と話す。

 社会のプラスイメージに影響するのが「働き方改革」や「人的資本の活用」だとすれば、マイナスイメージに直結するのが「人権問題への対応」だ。パナソニックとキリンのランキング推移を見ると、この問題への対応が企業イメージにいかに影響するかが分かる。

 パナソニックは20年の第1回調査で総合6位に入ったが、翌21年は社会とガバナンスのスコアを落とし13位に後退した。背景には、中国新疆(しんきょう)自治区のウイグル人に対する強制労働問題がある。人権団体がこの問題に関与している可能性があるとして14社の日本企業に質問状を送付したところ、パナソニックだけが未回答だったとWEBなどで報告した。同時期に実施した21年のESGブランド調査でパナソニックの社会イメージスコアは前年の28位から44位に、ガバナンスは12位から42位に急落、総合13位へと後退した。インテグリティだけが7位を維持した。自由意見には「パナソニックだけ未回答はおかしい」とのコメントが散見された。

 21年4月に就任した楠見雄規CEOは「経営の基本に立ち返る」ため、約60年ぶりに経営基本方針を改定した。創業者の松下幸之助氏による経営理念の根幹となる綱領・信条・七精神の文言を逐一引用し、現代的な解釈と文章で説明することで社員の理解を促している。さらに経営方針の実践に向け、「顧客第一」「自主責任経営」「人づくり」の重要性を過去の事例を挙げながら延々と説く、全編約1万7000語の労作だ。

 今年1月に同社は初のサステナビリティ説明会を開催し、楠見CEO自ら社会のエネルギー変革に向けた取り組みなどを発信した。4月には人権・労働方針を改定し、人権の尊重や働きがいのある労働環境の実現に努めると宣言した。

 ESG視点での社内改革と情報発信に取り組んだ結果、パナソニックの社会イメージスコアの順位は昨年の44位から6位に、ガバナンスに至っては42位から2位に急浮上し、初の総合3位に入った。

ガバナンスの振れ幅は大きい

 逆に今年、人権に絡む地政学リスクにさらされたのがキリンだ。ガバナンスイメージスコアが昨年の8位から165位に、社会が19位から42位に急落、総合でも8位から29位に後退した。21年2月にミャンマーで軍事クーデターが発生、キリンの合弁会社ミャンマー・ブルワリー(MBL)に入る資金が民主派弾圧に使われている可能性が指摘された。今年6月、キリンの保有株式51%をMBLへ売却し完全撤退したが、消費者の意識にこの問題は刷り込まれていたようだ。

 同じく飲料大手のサントリーも、今年はガバナンスが鬼門となった。5月、安倍晋三元首相の後援会が主催する「桜を見る会」の前日の夕食会に、同社が数年にわたって酒類を無償提供していたと報道された。その影響からか、同社のガバナンスイメージが昨年の17位から324位に急落。環境は2位を死守するも、総合順位は6位まで後退した。

 ESGの地道な取り組みによって年月をかけてつくり上げたブランドも、ネガティブなニュースによって一瞬で崩れてしまう。消費者のこうした問題への意識が明白に表れるのがガバナンスイメージのスコアだ。

 キリンもサントリーも、パナソニックのようにV字回復する可能性は十分ある。その企業への信頼を表すインテグリティの順位に揺らぎがないからだ。サントリーは昨年と同じ2位、キリンも昨年より1つ順位を下げたが14位を堅持している。

 カテゴリーごとのトップ10を見るとインテグリティは特徴的だ。第1回から今回まで3年連続でトップ10入りしたのは、環境でトヨタ、スターバックス、サントリー、イオンの4社、社会ではスターバックス、資生堂、日本マクドナルド、トヨタの4社、ガバナンスではトヨタと花王の2社だけだった。これに対してインテグリティは、トヨタ、サントリー、スターバックス、パナソニック、花王、ソニー、Apple(アップル)の7社がトップ10を維持している。「今後も応援し続けたい」という項目への回答が最も多く、これらのブランドへの愛着や信頼は強い。

 「基盤となるのはインテグリティ。環境、社会、ガバナンスのスコアを下げる要素があっても、その企業への信頼が本物であれば多少時間がかかってもスコアは戻るはずだ。自社への信頼を見極められるのがインテグリティで、ここを注視すべきだろう」と竹ケ原副所長は話す。

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