脱炭素へのエネルギー転換を目的としたトランジションボンド(移行債)の発行が相次いでいる。「移行」の重要性を世界に訴求し、海外マネーを取り込む有力な商品となるか。

 2022年に入ってトランジションボンドが続々と発行されている(下の図)。8月の段階で発行(表明)企業は10社、総発行額は約3200億円に達する。金利上昇の影響がある中でも、5年債は1.5~2倍の投資家需要を集めている。

■2022年発行の主な移行債(発行日の新しい順に掲載)
■2022年発行の主な移行債(発行日の新しい順に掲載)
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 トランジションボンドは、主に石油やガス、電力などCO2(二酸化炭素)排出量の多いいわゆるブラウンセクターが、省エネやエネルギー転換などによって脱炭素へ移行するための資金調達を目的に発行する。そうしたプロジェクトの多くは、資金使途を環境対策に限定したグリーンボンド(環境債)の発行が困難なため、それに代わる資金調達の手段としてトランジションボンドが活用され始めた。

 日本とは違い欧州ではグリーンかブラウンかという二元論が根強くあり、トランジションファイナンス(移行金融)の重要性について国際的な議論が始まったのは数年前のことだ。20年末に国際資本市場協会(ICMA)がトランジションファイナンスによって資金を調達する発行体が開示すべき4要素を示した(下の図)。これと整合する形で、日本政府は産業分野別技術ロードマップの策定やモデル事業の認定などによってトランジションボンドの発行を後押しし、22年の発行ラッシュへとつながった。

出所:経済産業省の資料などを基に日経ESG編集部作成
出所:経済産業省の資料などを基に日経ESG編集部作成

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