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 東京電力ホールディングスは新たなCO2削減目標を設定した。発電時のCO2排出量を2030年度までに13年度比で50%以上、総量で削減する。大手電力が業界単位ではなく個社で削減目標を設定するのは国内で初めてのことだ。

 分社前の東京電力が、13年度に小売りした2667億kWhの電気のCO2排出量は1億3900万tだった。19年度は約9260万tだ。これを30年度に約7000万t弱にする。小売電気事業の東京電力エナジーパートナー(EP)は、グループの東京電力フュエル&パワーが中部電力と50%ずつ出資した火力発電事業のJERA、再生可能エネルギー発電事業の東京電力リニューアブルパワーなどの他、グループ外から電気を調達して企業や家庭といった顧客に小売りしている。再エネや原子力発電など、CO2を排出しない電気を増やすことが目標達成の鍵になる。企業や家庭は、東電の電気を買った分、CO2排出を減らせる。

静岡県にある最大出力1万8370kWの東伊豆風力発電所(写真:東京電力リニューアブルパワー)

 東電1社(個社)の、総量のCO2削減目標でなければ、顧客も投資家も評価しない─―。東電ホールディングスでESGを担当する長﨑桃子常務執行役は、このように説明する。

 日本の電力業界は、発電量当たりのCO2排出量を示す「CO2排出原単位」の目標を、電力大手10社をはじめ業界全体で掲げてきた。原単位目標は、発電量を増やし事業を成長させながら効率改善や低炭素電源の採用を促す指標となった。だが、パリ協定が気温上昇の抑制を求めるなか原単位より総量でCO2を削減すべきという声が世界で高まっていた。

 東電の新目標は、日本のCO2排出の1割近くを排出する同社が、方針を明確にした例として評価できる。事業を通じて顧客や投資家の要請に答える「攻めのESG経営」の実現にもつながるだろう。東電の気候変動対策などESG経営について長﨑桃子常務執行役に尋ねた。

「攻めのESG経営」に取り組む

グループのESG経営の特徴は。

長﨑:19年4月にESG推進室を設置して以来、「守りのESG」と「攻めのESG」に力を入れている。「守り」は非財務情報の開示やエンゲージメントが中心だ。「攻め」では、社会課題に対するソリューションを事業を通じて提供することを目指している。

 大きな柱は、電化による脱炭素化と、社会のレジリエンシー(強靭さ)の向上だ。私自身はビジネス畑の出身で、事業を通じて競争力のあるソリューションの提供に注力してきた。(今年4月に)現職に就き、新しい事業に加え既存事業をESGへの貢献という切り口で再定義することの重要さを実感している。

 電化は、脱炭素化の切り札となる。例えば東電EPは、住宅向けに蓄電池やEV(電気自動車)、太陽光発電と組み合わせた電化を提案している。住宅の防災にも力を発揮する。また、運輸の脱炭素化を目的に、30年度までに4400台の業務車両の電動化と充電設備の設置を目指し「EV100」にも加盟している。

 社会のレジリエンシー向上では、自治体との協力や産官学の連携など幅広く進めている。一例として防災の分野では、東京都など多くの自治体と協定を結んだり、協議している。

 19年9月に関東地方に上陸した台風15号では大規模な停電が発生し、復旧に時間を要した。この教訓を生かす。停電時も、デジタルトランスフォーメーション(DX)により、どこでどのような原因で発生したかがより精緻に把握できる。迅速な復旧につなげるようにしたい。