今年6月30日、サントリーMONOZUKURIエキスパート(東京都港区)や東洋紡、レンゴーなど12社は、廃プラスチックの再資源化を手掛ける新会社「アールプラスジャパン」を設立したと発表した。ケミカルリサイクルと呼ぶ手法を使い、ペットボトルを含めた様々な廃プラを再資源化する事業に取り組む。まず技術を確立し、2027年にもライセンス提供を開始する。
発表会に登壇したサントリーホールディングスの新浪剛史社長は、「プラスチック問題は決して先送りできない喫緊の世界的課題だ。コロナ禍にあっても手を緩めず、新会社から画期的な新技術を広く発展させ、日本から新しい課題解決策を示していきたい」と意気込んだ。

再生材が争奪戦に
企業が業界を超えて団結する背景には、海洋プラスチック問題がある。廃プラが海洋汚染の原因になっているとして、社会の関心を集めている。投資家も重大な経営リスクとみて企業に対応を求める。
飲料や日用品メーカーをはじめ、企業は廃プラ削減対策を強化している。新会社に出資するサントリーグループやアサヒグループは、30年までに全てのペットボトルをリサイクル素材や植物由来素材などの環境配慮素材に切り替える方針だ。
そうした中、ペットボトルのリサイクル素材は既に供給不安が懸念されている。飲料や日用品メーカーはこれまで、主にメカニカルリサイクルという手法を使ってリサイクルを進めてきた。この手法は物理的処理を使うため比較的低コストで済む半面、異物の除去に限界がある。
これに対してケミカルリサイクルは大規模な設備を必要とするが、化学的処理によって廃プラをバージン(新品)原料と同程度の品質に再生できる。今後、リサイクル素材の供給量を増やすためには、ケミカルリサイクルの活用が欠かせない。
今回、アールプラスジャパンは、米バイオ化学ベンチャーのアネロテックの技術を活用する。従来のケミカルリサイクルと比べて工程が少ないため、エネルギー使用量やコストを抑えられる。アールプラスジャパンの横井恒彦社長は、「(バージン原料と比べて)十分なコスト競争力がある」と自信を見せる。
ペットボトルのリサイクルが進む一方、ペットボトル入り飲料の販売をやめる企業が登場した。ソーシャルベンチャーのユーグレナだ。健康食品事業で取り扱っている飲料の容器を9月から順次、ペットボトルから紙製容器に切り替える。
昨年10月にCFO(最高未来責任者)に就任し、今回の決定に関わった小澤杏子さん(18歳)は、「消費者が意識しなくても環境に配慮した行動を取れる仕組みを企業が構築すべき。ユーグレナ以外の企業にも波及し、環境に配慮した行動が当たり前となる世界を実現したい」と言う。
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