7倍の応募が殺到

 JA三井リースは3月5日、発行額100億円の5年債を発行した。クーポン(債券投資家に支払う利息)の利率は0.16%である。昨年8月28日に同じ発行額と年限で発行した普通債の利率は0.19%だった。つまり、グリーンボンドの方が0.03%低い。この0.03%の差はグリーニアムと言えるのか。財務部財務企画室長の小西健二氏は、「この差がグリーニアムかどうか明確には分からない。ただ、グリーンボンドが低利かつ安定的な資金調達につながったことは確か」と話す。

 社債発行時のクーポン利率は、その時点の国債金利や、他の債券の発行タイミング、日銀の買い入れ状況など様々な条件に左右される。そのため、この0.03%の差がグリーニアムかどうか一概には判断できない。

 ただ、グリーンボンドに対する投資家の引き合いは強まっている。発行額100億円に対しておよそ7倍の約700億円もの応募があった。調達した資金は、太陽光発電や風力発電設備の投資に充当する。グリーンボンドによって地方金融機関などに債券投資家層が広がり、今後の安定した資金調達につながると期待する。

 Jパワー(電源開発)も1月21日に200億円のグリーンボンドを発行し、発行額の5.4倍となる1078億円の応募があった。財務部財務室上席課長の中村尚志氏も「グリーニアムの影響がどこまであったか明確には分からないが、グリーンボンドの強い需要を感じた」と話す。

 同社のグリーンボンドの購入機関は61機関に上った。これは、他社を含めた電力債の中でも最多だという。昨年12月から今年1月にかけて実施した債券IR(投資家向け広報)では、投資家から「普通債もグリーンボンドも利率はあまり変わらない。再エネへの投資に力を入れるならグリーンボンドを発行すべきだ」という声があったという。

 債券が売却された場合、市場の需給で価格が決まる。需要が高まって債券価格が上がるとその分、利回りは低下する。中村氏によると、今年1月にクーポン利率0.35%で発行した同社のグリーンボンドの市場価格は上昇し、5月には利率0.3%相当の条件で売買が成立したという。発行時の条件より利回りが低くてもグリーンボンドを購入したいと考える投資家がいるということだ。

 同社は今後、風力発電事業を強化すべく、3年間で1000億円、その後も数千億円の設備投資を計画している。低利・安定的な資金供給の手段としてグリーンボンドを活用していきたい考えだ。

投資家はジレンマ

 投資家は、グリーンボンドでESG投資の拡大を進める一方で、運用成績の低下を受け入れるというジレンマを抱える。大和証券の尾谷シニア・ストラテジストは、「今は投資家がどこまでグリーニアムを受容できるかを見極めている」とみる。

 大手生命保険や金融機関などがESG投資を加速させており、グリーンボンドへの高い需要は続く可能性が大きい。脱炭素を目指す企業にとってグリーンボンドは、資金調達の有効な手段となりそうだ。企業は今後、グリーンボンドの活用成果を示していく必要がある。それが、将来の安定した資金調達につながる。

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