米国のジョー・バイデン大統領は同国が4月22日に主催した気候変動サミットに合わせて、パリ協定の下での2030年目標として「温室効果ガス排出量を05年比で50~52%削減する」との目標を発表した。これには、「電力部門で8割減、新車の4割をEV」といった高い目標の実現が求められる。達成できるかは綱渡りだ。

ジョー・バイデン大統領は4月23日に気候サミットを主催。世界の気候変動対策をリードする姿勢を示した(写真:AP/アフロ)
ジョー・バイデン大統領は4月23日に気候サミットを主催。世界の気候変動対策をリードする姿勢を示した(写真:AP/アフロ)

 米国政府が4月23日、国連に提出した文書によれば、経済部門別に温室効果ガスの削減経路を検討した上で国全体の排出見通しをモデルを用いて計算。その結果と外部機関によるモデル分析結果を比較した上で、目標を定めたという。

 米国政府は分析の詳細を提示していないが、各部門で追求する取り組みの例として、電力については35年までに全量炭素フリーとするための基準とインセンティブ、自動車については排出・燃費基準とゼロ排出車へのインセンティブ、建物についてはエネルギー効率化と電化、産業についてはCO2回収や水素へのインセンティブなどを挙げた。

電力で80%減、EV化の加速も

 しかし、この定性的な説明だけでは「50~52%削減」の意味をつかみにくいことから、定量的に考えてみる。

 米国政府が国連に提出している最新の報告によれば、19年の温室効果ガス排出量は森林による吸収分を考慮した上で、05年比で13%減であった。14年間で13%減ったわけだが、30年目標を実現するには、19年からの11年間でさらに37~39%分の削減の上乗せが必要となる。

 20年の排出量は現時点で報告されていないが、新型コロナウイルス感染症による経済低迷の影響で、05年比で21%減程度と見込まれている。他方、21年は経済活動の再開による反動で排出増が予想される。30年目標を達成するには、反動による増加幅を抑えつつ、その後の削減を加速させなければならない。

 部門別に見ると電力部門の排出削減が最も重要である。バイデン政権は35年までにゼロ排出にするとしているが、既に19年時点で05年比33%減となっており、35年ゼロ排出まで一定のペースで減るとすれば、30年時点では約80%減となる。35年に電力ゼロ排出とする分析の多くでも、30年は約80%減となっている。

 石炭火力発電の排出量をゼロ、他の発電の排出量は19年のままとすると、全体では73%減にとどまる。脱石炭を実現しても80%減には届かず、シェール革命後の約10年で拡大した天然ガス火力発電からの排出削減も必要となる。

 しかし、これだけでは30年目標には届かない。電力部門を80%減、他の部門は19年のままとすると、国全体では30%減にとどまり、50~52%に届かせるには他部門で20~22%分の削減を積み増す必要がある(下の図)。その際、他部門での削減には、様々なパターンがあり得る。

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