柱や梁(はり)などの構造材に木材を使った高層ビルの建設が相次ぐ。輸入木材の価格高騰や円安も、国産材の資源循環を後押ししそうだ。

 大林組は、全ての構造部材に木材を使用した「純木造」の高層ビル「Port Plus(ポートプラス)」を横浜に建設、2022年6月から研修施設として利用を開始した。高さ44メートル(地下1階・地上11階建て)は、純木造の耐火建築物としては国内最高となる。

大林組が横浜に建設した研修施設「Port Plus」。高さ44メートルは純木造の耐火建築物としては国内最高(撮影:エスエス 走出直道、写真提供:大林組)
大林組が横浜に建設した研修施設「Port Plus」。高さ44メートルは純木造の耐火建築物としては国内最高(撮影:エスエス 走出直道、写真提供:大林組)
(撮影:エスエス 走出直道、写真提供:大林組)
(撮影:エスエス 走出直道、写真提供:大林組)
(撮影:エスエス 走出直道、写真提供:大林組)
(撮影:エスエス 走出直道、写真提供:大林組)

 「国内の重要な循環資源である木材の利用促進につながると考え、純木造の高層建築に取り組んだ」と、木造・木質化建築プロジェクト・チームの岡有担当部長は話す。

 高層木造建築には高度な耐火性、耐震性が求められる。Port Plusは、木質の柱梁(ちゅうりょう)として3時間耐火認定を取得した構造材を採用した。また、鉄骨造や鉄筋コンクリート(RC)造と同等の強度・剛性を確保するため、木質の柱梁を剛接合する新技術を開発した。構造体と内装材を合わせ、木材の総使用量は1990立方メートル。このうち国産材の比率は約65%である。

 木造は他の工法と比べ、建設時(材料調達から輸送・加工・建築の過程)における二酸化炭素(CO2)排出量を削減できる。同等の延べ床面積(約3500平方メートル)の鉄骨造に比べ約1700トン、RC造に比べ約6000トンの削減と試算している。

ホテルや商業ビルに広がる木造

 21年10月に「都市(まち)の木造化推進法」が施行された。国産材の活用によるCO2固定化(脱炭素化)と、サーキュラーエコノミー(循環経済)の実現が狙いだ。最近は市庁舎などの公共建築だけでなく、民間の住宅以外の建物にも木材を活用する“ウッド・チェンジ”が緩やかに広がりつつある。

 21年、木材を構造材として部分的に活用する高層ハイブリッド木造建築が都市部で相次いで完成した。10月に開業した都市型ホテル「ザロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」(高さ46.1メートル)は、約1060立方メートルの木材を構造材として使用し、その8割を北海道内から調達。地産地消の循環経済に貢献する取り組みとして注目を集めた。東京・銀座の商業ビル「HULIC&New GINZA 8」(同60.5メートル)、東京・神田の分譲マンション「プラウド神田駿河台」(同48.4メートル)など、多様な業態にハイブリッド木造建築が広がっている。

 20年には48年ぶりに日本の木材自給率が40%台を回復した。円安や輸入木材の価格高騰によって、ウッド・チェンジがさらに進む可能性がある。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「ESG 世界の最新動向」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。