社内炭素価格を引き上げ

 21年5月に、40年にカーボンゼロ(CO2排出実質ゼロ)、50年に自社の排出量を上回るCO2を減らすカーボンネガティブを掲げた花王は、22年4月に進捗状況を発表した。

 自社のCO2排出量(スコープ1・2)は、30年までに17年比55%削減の目標を掲げる。21年は、同20%減らした。使用電力を30年までに100%再生可能エネルギーにする目標に対して、21年の実績は38%だった。国内に55カ所ある全物流拠点で100%を達成するなど一定の進展はあるものの、取り組みをより一層加速させる必要がある。

 そこで、22年からCO2の排出に価格を付ける社内炭素価格制度の導入対象を海外の工場にも広げる。21年、CO2排出量当たりの価格も引き上げた。同制度は06年に国内の工場に導入し、省エネ設備や再エネ設備の投資判断に活用している。具体的には、設備投資をする際、CO2の削減効果を金額に換算し、それも加味して導入するかどうか判断する。これによって、従来は導入に至らなかった高価な設備も積極的に採用し、CO2削減を進める。

 21年6月に酒田工場(山形県酒田市)で運用開始したグループ最大規模となる2800kWの太陽光発電設備も、社内炭素価格に基づく効果を勘案して投資を決断したものだ。

花王は、酒田工場(山形県酒田市)にグループで最大規模となる2800kWの太陽光発電設備を導入し、運用を開始した(写真:花王)
花王は、酒田工場(山形県酒田市)にグループで最大規模となる2800kWの太陽光発電設備を導入し、運用を開始した(写真:花王)

 花王のスコープ1・2の排出量の半分以上が海外のため、社内炭素価格制度を生かして削減する。花王ESG部門ESG活動推進部ESG活動マネジメントグループ担当部長の柴田学氏は、「55%削減の目標達成に向けて大きな効果が見込める。今から投資する設備は30年時点でも稼働している。(CO2排出規制の強化で価値が大きく毀損される)『座礁資産』にならないように気を付けないといけない」と話す。

 対策が遅れ気味なのが、スコープ3の排出量削減だ。21年の実績は17年比4%減で、30年に同22%削減するという目標には遠く及ばない。新型コロナウイルスの影響で、ハンドソープや食器用洗剤などの販売が大きく伸びたのが要因だという。

 スコープ3は花王のCO2排出量の9割超を占めるため、脱炭素の目標達成には対策のてこ入れが欠かせない。最も多いのが製品使用時の排出量で、今後、節水型の洗剤などの展開を増やす。

 原材料調達でのCO2排出削減では、調達先への働きかけを強化する。原材料に関わる排出量の把握、共有を求める。既に主要な調達先については、削減目標を設定しているかどうかを評価項目に入れて取り組み状況を確認している。国内外の調達先約500社を集めて調達方針などを説明するベンダーサミットの場でも、CO2排出削減を要請した。

 カーボンネガティブの切り札とみられる「カーボンリサイクル」の商用化も急がれる。CO2を回収して製品の原料に使う技術だ。ESG経営で企業価値向上を目指す花王だが、株価は伸び悩む。脱炭素の機会を獲得し、株主や投資家の期待を超える収益を上げる必要があるだろう。

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