情報開示:開示なければ信頼失う

 従業員の健康・安全確保や資金繰りと並んで経営者を悩ませているのが、決算発表や株主総会などでの情報開示だろう。危機が長引く様相を呈しており、事業にどういった影響が生じるかを現時点で正確に見通すのは困難を極める。

 人との接触を回避するため監査もままならず、決算発表や株主総会を延期する企業も出ている。金融庁は20年4月17日、3月期決算企業について有価証券報告書の提出期限を通常より3カ月遅らせ、9月末まで一律に延期できるようにした。

 厳しい状況とはいえ、企業にとって新型コロナに関する情報開示は必須であるばかりか、投資家の評価にも影響する。

 有価証券報告書や統合報告書などでの情報開示について、「必要」と投資家は口をそろえる。

 フィデリティ投信の三瓶氏は、「19年から有価証券報告書の記述情報の充実が求められている。『事業等のリスク』に新型コロナの影響や対応策について記載しない企業は市場からの信頼を大きく失うだろう」と言う。記載がない場合、「(影響を)把握できていない、対応策がない、予想以上に大きな問題が生じている、などネガティブな連想を助長する」(同氏)。

 「(新型コロナに関する)情報開示は非常に重要。BCPを含めた対応は資本市場でも重要な意味を持つ」(りそなアセットマネジメントの松原氏)。投資家は情報開示を強く要望するが、現状は十分でないという見方もある。事態は刻々と変化しており、「現時点での影響のタイムリーな情報開示が望ましい」(アセットマネジメントOneの矢野氏)。

 国内のある運用会社は、「有価証券報告書の事業の状況で触れる程度であれば意味がない。サプライチェーン・社内・業界への人的・業績インパクトと対応、今後の企業運営の変化といったことを統合報告書で触れてほしい。開示の有無による企業価値算定への影響は限定的だが、企業がどのように対応したかでレジリエンスに対する見方が考慮される」と言う。

 大勢が同じ場所に集まれないという物理的な制限はあるにせよ、デジタル技術を駆使し、社内外から情報を収集することが開示への第一歩になる。

株主総会:バーチャル総会に期待

 6月にピークを迎える20年の株主総会シーズンは、新型コロナの影響を大きく受けるだろう。

 株主質問では、今後の事業の見通しや対策などについて聞かれるのは避けられない情勢だ。BNPパリバ証券の中空氏は、「新型コロナで企業経営の何が変わったか。どの需要がこれから無くなり、逆にどの需要が増えるのか。こうした見通しの変化について、経営者が熟考したかを聞きたい」と答えた。新型コロナの影響下で企業をどうかじ取りしていくのか。経営者は、未来の姿を問われる。

 新型コロナ対策以外では、取締役の多様性や政策保有株式の縮減など、コーポレートガバナンス・コードで重要ポイントとされているテーマが引き続き注目されそうだ。

 投資家からは、「取締役会の独立性や多様性強化の動き」(三井住友トラスト・アセットマネジメント)、「持ち合い株式の解消」(アセットマネジメントOne)、「配当や自社株買いの考え方」(BNPパリバ証券)といった声が上がった。

 20年は、感染症対策としてインターネットを介して遠隔から株主総会に参加する「バーチャル株主総会」を検討する企業が増えている。これに対しては、「完全インターネット総会の必要性が喚起された」(フィデリティ投信)、「ネット中継や後日のウェブ開示などを進めてほしい」(国内運用会社)といった意見が寄せられた。

 ESG投資家にとって、株主総会は企業のESG経営の取り組みを確認する場だ。危機をどのように乗り越え、新たな価値を生み出す機会に変えるのか。ESG投資家は、経営者の発言に注目している。

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