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 新型コロナウイルスの感染拡大は、長期視点のESG投資にどう影響するのか。「運用方針」「情報開示」「株主総会」など6つの注目点について機関投資家に聞いた。

 「コロナショック」で経済は大きく減速し、世界はリーマン・ショックを超える可能性もある危機に直面している。

世界大恐慌以来の不況

 国内では、2020年4月7日に政府が史上初となる「緊急事態宣言」を発令。16日には、対象を7都府県から全国に広げた。移動制限を受けた需要の蒸発によって、工場の生産縮小や店舗の営業停止が相次ぎ、多くの企業が在宅勤務に切り替えた。経済活動の大半がストップした状態が続き、大企業でさえ資金確保に苦慮している。

「緊急事態宣言」の発令でオフィス街から人影が消えた

 国際通貨基金(IMF)は同月14日、世界経済の成長率が2020年はマイナス3.0%になり、世界大恐慌以来、最悪の不況をもたらすとの見通しを発表した。

 パンデミック(世界的な大流行)収束の見通しが立たない中、企業は雇用の確保や資金難の回避に奔走している。足元の対応に追われ、ESGの重要テーマの気候変動や人権といった環境・社会課題の解決に振り向ける余裕がないのが実情だろう。

 未曽有の危機に瀕している状況下で、ここ数年、拡大しているESG投資に影響はないのか。日経ESGは、機関投資家にアンケートを実施した。以下、「運用方針」「テーマの重要性」「エンゲージメント」「情報開示」「株主総会」「年金のESG投資」の6つの注目点について、投資家の見解を紹介する。

運用方針:「S」の取り組みに注目 

 新型コロナの感染拡大で世界的な株安が続く中、ESGを重視する投資家は運用方針や投資判断の基準を変えるのか。

 アンケートでは、ほぼ全ての資産運用会社が「変更なし」と答えた。ESG投資家は、コロナショックによる経済状況の悪化は短期的な影響と捉えており、引き続きESGを重視するスタンスに変化は見られない。

 むしろコロナショック後は、ESGをより重視する方向になると考えている投資家が多い。りそなアセットマネジメント執行役員責任投資部長の松原稔氏は、「長期的にはより重視する方向に向かう」と予想する。BNPパリバ証券チーフESGストラテジストの中空麻奈氏は、「当面、収益見通しとの兼ね合いでESGの割合を落とすことがあったとしても、その後はさらに強化される」と回答した。

 では、ESGのどの項目がより重視されるのか。中空氏は、「気候変動、働き方改革、生存権、健康の意義などがさらに重要な要素になってくる」とみる。

 フィデリティ投信の三瓶裕喜ヘッドオブエンゲージメントは、「ESGのS(社会)の軽視があったかもしれない」と言う。三瓶氏は、体調が悪くても出勤せざるを得ない社会環境が、感染症を広めた1つの原因となった可能性を指摘する。今後は、従業員の健康管理や働き方改革など、社会面の取り組みに目を光らせる投資家が増えそうだ。

 三井住友トラスト・アセットマネジメント常務執行役員の堀井浩之氏は、「感染症リスクへの対応を含む社会的な課題への取り組みで先行する企業は、来るべき世界経済の回復や再成長を牽引していくと考えられる。ESG投資スタンスを継続することでそうした企業への投資資金の流れを絶やさないことが、今世界が直面している課題の解決ひいては運用資産の中長期的な成長に資する」と言う。

 新型コロナの感染拡大で不足している人工呼吸器やマスクの生産を、自動車メーカーや電機メーカーといった異業種が手掛ける例も出ている。コロナ後、危機の中にあっても社会に貢献する企業かどうかで評価が分かれる可能性がある。