世界の首脳は昨年9月、開発によって破壊した自然を2030年までに回復させると誓った。自然の財務開示を目指す「TNFD」設立の立役者の1人、国連開発計画(UNDP)総裁がその意図を語った。(聞き手:藤田 香/日経ESG)

<span class="fontBold">アヒム・シュタイナー氏</span><br />国際自然保護連合(IUCN)事務局長(2001~06年)、国連ナイロビ事務局長(09~11年)、国連環境計画(UNEP)事務局長(06~16年)などを経て、17年にUNDP総裁に就任。国連開発グループ(UNDG)の副議長も兼務し、40の国連基金、プログラム、専門機関、その他の組織をまとめる。30年以上にわたって持続可能な開発と国際協力分野でリーダーシップを発揮している(写真:UNDP提供)
アヒム・シュタイナー氏
国際自然保護連合(IUCN)事務局長(2001~06年)、国連ナイロビ事務局長(09~11年)、国連環境計画(UNEP)事務局長(06~16年)などを経て、17年にUNDP総裁に就任。国連開発グループ(UNDG)の副議長も兼務し、40の国連基金、プログラム、専門機関、その他の組織をまとめる。30年以上にわたって持続可能な開発と国際協力分野でリーダーシップを発揮している(写真:UNDP提供)

昨年9月の国連総会で、70カ国の首脳・閣僚が生物多様性を保全するという誓約「Leaders’Pledge(自然のためのリーダー誓約)」を行いました。国連開発計画もこの動きを後押ししました。世界の首脳が自然を守る誓約を行ったのはなぜですか。

シュタイナー:まず、我々人類は失敗を深く認識しなければなりません。この100~200年、人間による開発は自然に大きな影響を及ぼしました。昨年発表された「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)」は、生物多様性の国際ルール「愛知目標」が達成できなかったことを明らかにしました。

 「自然のためのリーダー誓約」は、人類の失敗を認め、2030年までに自然を回復させると約束しました。生物多様性や気候変動への対策を通して新型コロナ感染症からの「グリーンリカバリー」を進め、生産と消費の在り方を見直すことなど10原則に世界の首脳が誓約しました。

 我々は自然資本にますます依存しています。開発が生物多様性や自然にインパクトを与えることを認め、その道筋を切り替えると国のトップが宣言したのは、大きなターニングポイントになりました。

金融の意思決定に自然を

国連総会では、自然に関するリスクと自然への依存や影響を開示する枠組みをつくる「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」の非公式作業部会も発足しました。なぜ自然の財務的開示が必要なのですか。

シュタイナー:金融業界は、投資先企業の活動が持続可能性に貢献するプラスのインパクトを及ぼすか、破壊に向かうマイナスのインパクトを及ぼすかに大きな関心を持っています。企業が自然資本をどう利用し、影響を与えているのかに投資家は興味を持ち、投資判断につなげています。株主は保有株のリスク判断につなげています。その企業の商品が自然に悪影響を及ぼして売れなくなればリスクを背負いますからね。

 良い例がブラジルのバイオエタノール生産です。大規模に取り組んできましたが、バイオマスの農業生産が熱帯雨林の破壊につながり持続可能ではないと世界から指摘されたこともあり、市場は伸び悩みました。

 こうした背景から、TNFDは金融セクター主導のワーキンググループから始まりました。そこに環境NGOの世界自然保護基金(WWF)やグローバルキャノピーが環境の専門家として呼ばれました。UNDPは開発の専門家として参加を依頼されました。我々は170カ国・地域にネットワークを持ち、途上国の政策や事業立案に助言しています。途上国の経済発展には、水、豊かな土壌、森林生態系などの自然資本が必要だとして、参加を要請されました。

 企業活動は自然に依存し影響を与えています。だが、これまで自然破壊のコストを負ってきたのは社会であり、企業はそのリスクやコストを負担してきませんでした。その矛盾を埋めていきたいと考えています。

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