良品計画は、2030年に売上高3兆円企業を目指して地域密着の出店にかじを切る。狙うのは、地域の「つながり」という見えない価値の獲得だ。

良品計画の新店舗「MUJIcom 東池袋」。来店者が他の来店者にコーヒーを提供する「つながるコーヒー」
良品計画の新店舗「MUJIcom 東池袋」。来店者が他の来店者にコーヒーを提供する「つながるコーヒー」

 地域で頑張る学生さんにコーヒー1杯プレゼントします――。

 1月14日に開店した良品計画の新店舗「MUJIcom 東池袋」には、コーヒーマシンの横にこうしたメッセージが書かれたチケットが並ぶ。店舗を訪れた人は、このチケットをレジに持っていくと無料でコーヒーが飲める。

 仕組みはこうだ。来店者がレジでチケットを50円で購入し、メッセージを書いて掲示板に張り付ける。残りの50円は店舗が負担する。このチケットは、店舗に来た誰かの「気持ち」だ。その気持ちを受け取った人がまた気持ちをチケットに託し、人と人とがつながっていく。これが、「つながるコーヒー」の仕組みだ。

 店舗がそろえるのは「無印良品」ブランドの衣料品、日用品、食品などだ。加えて、地域住民同士がつながる仕組みをふんだんに取り入れている。地域に根付いた商品を紹介・販売する「つながる屋台」、地域イベントを紹介する「つながる掲示板」などだ。家庭で余った食材も受け付け、地元のフードバンクや子ども食堂に寄付する。営業本部販売部長の片木志倫氏は、「地域のつながりをつくるコミュニティーセンターの役割を担いたい」と言う。

地域の商品を販売する「つながる屋台」
地域の商品を販売する「つながる屋台」
地域のフードバンクなどへの寄付も受け付ける
地域のフードバンクなどへの寄付も受け付ける

 同社は、昨年9月の堂前宣夫社長の就任を「第二創業」と位置付け、企業理念や使命を再定義した。そこで打ち出したのが、店舗のコミュニティーセンター化だ。国内で年間100店舗の出店を予定しており、こうした地域密着店を増やしていきたい考えだ。

地域の「つながり」を企業価値に

 2021年8月期の売上高は4536億円で、30年に3兆円にする大目標を掲げている。出店拡大に当たっては、駅前の一等地はファーストリテイリングなど大手が、地域の小型店はコンビニチェーンが幅を利かせている。差別化の決め手に選んだのが、地域の「つながり」だ。この見えない価値を企業価値に転化できるか。挑戦が始まった。

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