全日本空輸(ANA)は、航空燃料の脱炭素化を利用者と共に進める。気候変動対策に関する情報を企業が開示する際の主要な枠組みである「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」での開示に使えるCO2削減証書を発行することで企業の参画を促す。

2021年9月にSAFを利用した日本初の航空貨物便が成田空港からフランクフルト空港まで運航(写真:ANA)
2021年9月にSAFを利用した日本初の航空貨物便が成田空港からフランクフルト空港まで運航(写真:ANA)

 ANAは、企業のCO2排出削減を支援する「SAFフライトイニシアチブ コーポレート・プログラム」の受付を2022年1月20日に開始した。ANAが運航する航空便を出張などで利用した企業に対して、生物由来のバイオジェット燃料をはじめとする「持続可能な航空燃料(SAF)」によってCO2削減に貢献したことを示す証書を付与する。この証書は、欧州連合(EU)の再生可能エネルギー指令に準拠しており、「TCFD」や「CDP」などの気候変動対策に関する企業の情報開示に使用できる。

 ANAは、年間契約を結んだ企業の従業員が1年間に出張などで使った航空便の飛行距離を見積もり、SAF利用によるCO2削減効果を算出、それに応じた証書を発行する。企業は航空運賃とは別にSAF導入コストの一部と証書発行にかかる費用などを利用料として支払う。企業が削減したいCO2排出量や予算を提示して契約することもできる。

プライム上場企業に照準

 プログラムの主なターゲットは、22年4月に東京証券取引所に新設されるプライム市場の上場企業。昨年改訂されたコーポレートガバナンス・コードが同市場に上場する企業にTCFD情報開示を求めているからだ。特に原材料の製造や輸送、販売した製品の使用段階などで発生する温室効果ガスのバリューチェーンでの排出量(スコープ3)が排出量全体(スコープ1~3)の40%以上を占める企業は、その算定・開示が必要となり大きな課題になっている。

 ANA企画室の乾元英航空政策/ESG担当は、「スコープ3の比重が高い商社などに利用メリットがあるとみている。製品輸送時のCO2排出を削減するカーゴ・プログラムもあり、製薬企業や精密機器メーカーなどの需要を開拓していきたい」と話す。

 先行して運用を始めたカーゴ・プログラムには日本通運ほか2社が既に参画している。21年9月にはSAFを利用した日本初の共同運航の貨物便が成田空港からドイツ・フランクフルト空港に向けて飛び立った。

 国際航空の世界ではCO2排出規制が強化され、航空会社の間でSAFの争奪戦が激化しつつある。ANAは、SAF導入プログラムを貨物輸送業界や企業向けに提供することでSAFの需要を安定的に確保し、SAFを供給する事業者に対する交渉力を高めたい考えだ。

「日経ESG」は企業が持続的に成長するために欠かせないESG(環境・社会・ガバナンス)に焦点を絞った経営誌です。経営者の羅針盤になった「SDGs(持続可能な開発目標)」、対策が待ったなしの気候変動問題、投資家が注目するガバナンス改革など、世界の動向を踏まえてESGの最新情報をお伝えしています。

日経ESG 日経ESG経営フォーラムはこちらから

この記事はシリーズ「ESG 世界の最新動向」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。