花王は2021年1月、長谷部佳宏社長が就任し、新たな体制でスタートを切った。現在、2021~25年度のグループ中期経営計画「K25」の下で取り組みを進めている。「社員活力の最大化」をK25の目的の1つに掲げ、「OKR(目標と主要な結果)」と呼ぶ人材活性化制度を導入。社員個人が設定する目標の3割をESG(環境・社会・ガバナンス)関連のものにするようルール化した。企業理念「花王ウェイ」もおよそ17年ぶりに大幅に改訂した。ESGへの取り組みや社員の活性化はどこまで進んだか、社長就任1年目の自己評価を聞いた。

花王の長谷部佳宏社長(写真:花王)
花王の長谷部佳宏社長(写真:花王)

社長就任1年目を自己採点すると何点になりますか。

長谷部佳宏社長(以下、長谷部):今の段階で言うと30点です。「K25」の目標に対して自分の想定以上に進んだものも当然ありますが、そうではないものもあります。

想定以上に進んだのは何ですか。

長谷部:デジタルです。例えば、お客様のロイヤルティーを測るシステムがほぼ完成しました。40%のシェアを持っている商品があったとして、そのうちロイヤルティーの高い人たちの購入がどれぐらいあるかをタイムリーに出せるようになってきました。そのデータを基にすればマーケティングの効率を上げられるようになります。

想定通りに進まなかったのは。

長谷部:やっぱり新型コロナウイルス禍で事業全般が影響を受けています。これだけ人々の行動が変わり、活動量が下がると、花王の商品がお役に立てる領域がずれていってしまいました。家庭用品はこういう状況に弱いことを改めて学びました。

追い詰める集団に

「OKR」を導入して社員が活性化している手応えはありますか。

長谷部:部門の会議などではOKRを基に自分の話をすることが定着し始めています。チャレンジングな目標を最初にどんと出す人もいますし、この人はこんなことを考えていたんだというのが見えるようになりました。その結果、まとめにかかる会議ではなくて、自分たちがどこまでやろうとしているのか追い詰める会議に変わってきています。

 例えば(自社の排出量を上回るCO2削減効果を実現する)カーボンネガティブの実現というテーマがあります。以前までなら積み上げ式の目標値や時間軸で考えがちでしたが、OKRを導入してがらりと変わりました。研究部門も生産部門も事業部門も味方になり、この期間でこのレベルまで行こうという話になります。今、進めている炭酸ガス(CO2)を固定して有用物質に変える取り組みも、近いうちに原料としてお客様に届けられるようになりそうです。従来ならずいぶん先の話になっていたと思います。

ESGに関連した目標を全体の3割に入れるようにして、どんな目標を掲げる社員が出てきていますか。

長谷部:いろいろな部門のESGがあるんだなと改めて思います。単純に考えるとESGは事業から遠いもののように見えますが、なるほど、そういうふうに考えればどの部門にもESGは存在するのかと。

 例えば人材開発部門では、ダイバーシティ&インクルージョンのテーマでハンディキャップがある人たちに対してどうするかをESGの目標にしている人がいます。ボランティアをするという人もいます。製造業として社会課題の解決に貢献するだけではなくて、別のカテゴリーで探そうという動きが出ています。

 あなたのESGの目標は何ですかと問われることは、自分の仕事の意味を問われているのと同じだと思います。この会社で働く時間を何と捉えていますかと。社員に「パーパス(存在意義)」を考える機会を与えているのではないでしょうか。

企業理念「花王ウェイ」を改訂されました。社員の理解は進んでいますか。

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