多様な社員が生き生きと働ける社内風土をつくるD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進は企業の成長に欠かせない。セールスフォース・ジャパンは、LGBTQ+(性的少数者)の当事者が働きやすい環境を整えるために新たな福利厚生制度を導入した。性別適合手術の医療費補助や有給休暇付与などで支援する。

顧客管理システム大手のセールスフォース・ジャパン(東京・千代田)は2021年11月、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進するため、LGBTQ+当事者向けの2つの新たな福利厚生制度を導入した。LGBTQ+とは、性的マイノリティーの総称で、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)、クエスチョニング(Q)、それ以外の性的指向と性自認(+)を意味する。
新たに導入した福利厚生制度「ジェンダーインクルーシブベネフィット」は、グローバルのセールスフォースで導入するもので、性別適合手術やホルモン療法などの費用を補助したり、手術からの回復期間に有給休暇を付与したりするといった制度だ。新たな装いのための衣料品購入費まで支給するなどきめ細かい。
「パートナーシップ制度」は、同性婚に関する法制度が整備されていない日本で独自に導入するものだ。婚姻に準ずるパートナーシップ合意契約や任意後見契約を締結する際の公正証書の作成費用を補助する。
「いろいろなバックグラウンドを持った人が働きがいを持って働けているのかを社内でレビューする中で導入が決まった」(鈴木雅則・常務執行役員人事本部長)
多様な人材が働きやすく
セールスフォースは企業理念に相当するコアバリューとして「信頼」「カスタマーサクセス(顧客の成功)」「イノベーション」「平等」の4つを掲げる。中でも平等の活動は特徴的で、今回の新制度導入だけでなく、LGBTQ+の当事者が働きやすい環境づくりのために独自の活動を進めている。
その1つが「アウトフォース」という社員主体のグループだ。当事者とアライと呼ぶ支援者が参加して、LGBTQ+への理解を深める活動を実施する。LGBTQ支援イベント「東京レインボープライド」に参加したり、社内で独自のイベントを開催したりしている。
セールスフォースには、このような社員グループが世界に12ある。日本ではアウトフォースのほか、女性活躍の「ウィメンズネットワーク」、障がい者雇用を促進する「アビリティフォース」、サステナビリティを推進する「アースフォース」の3つが活動しており、D&Iの推進が社内に浸透している。企業の性的マイノリティーに関する取り組みを評価する任意団体work with Prideの「PRIDE指標」で、最高賞の「ゴールド」を4年連続で受賞している。
技術変化の激しいIT業界では、人材の獲得競争も激しい。平等という企業理念を徹底して実践し、多様な人材が働きやすい環境をつくることは、競争力を維持するためにも欠かせない。
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