クラウドファンディングのミュージックセキュリティーズは、ESG情報を開示する「社会的リターン指標設定ファンド」をスタートした。地方の金融機関と組み、企業の資金調達や情報開示を支援する。ESG投資に関心が高い個人を呼び込み、差別化を図る。

セキュリテの「社会的リターン指標設定ファンド」の第1弾として、米コーヒーチェーンTHINK COFFEEの日本初出店の費用を募るファンドを組成した(写真:ミュージックセキュリティーズ)
セキュリテの「社会的リターン指標設定ファンド」の第1弾として、米コーヒーチェーンTHINK COFFEEの日本初出店の費用を募るファンドを組成した(写真:ミュージックセキュリティーズ)

 クラウドファンディング「セキュリテ」を運営するミュージックセキュリティーズ(東京・港)は、クラウドファンディングで資金調達する企業のESG(環境、社会、ガバナンス)情報開示を始めた。

 インターネットで小口資金を募るクラウドファンディングは、中小企業の資金調達の手段として裾野が広がっている。セキュリテは、2001年に事業を開始してから現在まで約930本のファンドを組成し、集めた資金総額は100億円を超えた。利用登録者数は約14万人である。

 事業者同士の競争も激化している。今回の同社の決断は、ESG投資の関心が高い個人を呼び込み、差別化を図る狙いがある。小松真実社長は、「個人と企業の共感を投資に結び付けるインパクト投資のプラットフォームづくりを目指している。最終的に全ての企業にESG開示を求めていきたい」と話す。

資金調達や情報開示を助言

 セキュリテが導入したのが、「社会的リターン指標設定ファンド」だ。対象企業は、事業が環境や社会にもたらすインパクトを開示する。

 第1弾として6つのファンドを指定した。その1つが米コーヒーチェーンTHINK COFFEEの日本初出店を支援するファンドだ。コーヒー農園に利益が届く仕組みを構築し、再利用可能なカップの交換サービスを実施するなど、社会や環境に配慮した経営を実践している。

 まず、開示指標を投資家募集ページに公開した。開示するのは、温室効果ガス排出量など環境面の6指標、契約農家からのコーヒー豆の調達量など社会面の6指標、各種方針の策定や認証取得などガバナンス面の2指標だ。毎年、この指標に沿ったスコアを開示していく。

 このファンドへの出資は一口2万7000円から。総額2000万円の調達が目標である。THINK COFFEEが上げた利益によって、出資者への分配金額が決まる。

 中小企業の資金調達は、地域金融機関による融資が一般的だ。ただし、経営基盤が弱い企業も多く、融資が実現できなかったり融資金額が限られたりするケースも多い。

 ミュージックセキュリティーズは地域金融機関約80社と業務提携を結び、こうしたケースがあったら融資とクラウドファンディングを組み合わせた資金調達ができないかを検討する。企業には、ESGの取り組み内容や情報開示なども助言する。

 クラウドファンディング事業者が、中小企業のESG経営を後押しし始めた。

「日経ESG」は企業が持続的に成長するために欠かせないESG(環境・社会・ガバナンス)に焦点を絞った経営誌です。経営者の羅針盤になった「SDGs(持続可能な開発目標)」、対策が待ったなしの気候変動問題、投資家が注目するガバナンス改革など、世界の動向を踏まえてESGの最新情報をお伝えしています。

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