全4112文字

日本をリードする東京大学で進む大胆な改革。人口減、グローバル化への対応などには、それに続く大学群でも改革は必須だ。特に私立大学では「経営」に直結する。世界の有力校と競う、企業・地域のニーズに合わせる、まず縮小均衡を図る……、それぞれの立ち位置で激しい生存競争を繰り広げている。

 東京大学を頂点とするヒエラルキーの中、入試の偏差値や就職実績で少しでも上に行こうとする。大学の大きな関心事の1つは、長い間そこにあったといってもいいだろう。だが、価値観は次第に変わってきている。特に私立大学にその動きが見える。大学ヒエラルキーは、星雲状態に分解しつつある。

 なにがその変化をもたらしたのか。まず1つは人口減である。18歳人口はこの30年減り続け、19年ごろからさらに減少に拍車がかかる。一方で、4年制大学の数は増加。その約77%が学生の授業料を収入の中心とする私立大であり、その経営は当然厳しくなる。

 そしてもう1つ、同時に進んだのが経済のグローバル化や技術の進化だ。世界でヒト・モノ・カネの移動が激しくなり、市場の一体化が進んだ。さらにはIT(情報技術)の様々な分野への拡大と、AI(人工知能)やIoTの広がりなどが世界を変えてきた。社会や企業からの要求の変化に応えることが大学の課題となった。

教員の国際公募と基盤教育の徹底を図る早稲田大

 生き残りに迫られた私立大はどう動いたのか。その1つが海外の大学との提携拡大や文系と理系の融合など時代に合わせた新学部開設や教育強化だ。

 例えば早稲田大学。2018年秋に田中愛治総長が就任して以降、研究力と教育力の基になる教員の国際公募を本格化し、全学に広げ始めた。さらに基盤教育と呼ぶ独自の教育体制を大幅に強化した。これは、論理的な日本語文章作成の能力を養う講義や、文系の学生も数学的論理思考を学ぶ数学の講義、英語の発話・論理的文章作成講義といったものだ。

 私大の雄とはいえ、世界に目を向けた改革は容易なものではない。なぜ、田中総長は新たな改革に動いたのか。