2020年4~6月期の決算発表が真っ盛り。新型コロナウイルスの影響が企業業績を大きくむしばんでいる様子が広くうかがえる。この先、事業環境がいつ正常化するかを見通すことは極めて難しい。注意しなくてはならないのは、適正ではない方法で利益を確保しようとするケースが増えかねないことだ。
日本公認会計士協会がこのほどまとめた「上場会社等における会計不正の動向(2020年版)」によると、20年3月期に粉飾決算などの会計不正を公表した企業は46社(3月末時点では調査中が8社)と、この5年で最も多い水準となった。19年3月期の30社前後のおよそ1.5倍に急増している。
あくまで期中に不正を公表したケースなので、今年に入って本格化した新型コロナウイルスの感染拡大はまだほとんど影響していないと考えていいだろう。それだけに、多くの企業が業績低迷に苦しむと予想される21年3月期は要注意かもしれない。「景気後退期では目標や予算達成のプレッシャーが増し、会計不正は増える傾向にあるだろう」。会計不正に詳しい松澤綜合会計事務所代表の松澤公貴公認会計士はこう話す。不正な方法で利益を水増ししようとする企業が増えないとは言い切れない。
業績低迷に苦しむ中で会計不正に手を染めた事例の1つが、ジャパンディスプレイ(JDI)だ。主力の中小型液晶パネルで中韓勢の攻勢を受け、18年3月期から3期連続で1千億円を超える連結最終赤字に沈んでいる。19年11月、懲戒解雇した経理担当の元幹部から「経営陣の指示で過去に不適切な会計処理を行っていた」との通知を受け、第三者委員会が調査をまとめた結果、在庫の過大計上による利益の水増しなどが発覚した。
「長年の業績不振や営業利益を最重視する社風が不正会計の背景にあった」(JDIの菊岡稔社長)。最大顧客の米アップルは液晶から有機ELへのシフトを進めており、苦しい状況は続いている。そのなかでも利益を重視してきたというJDIの社風は、「チャレンジ」と称する無理な目標を達成するために会計不正がはびこった東芝と重なる部分もある。
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