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 日本の国際競争力の低下に歯止めがかからない。6月16日、スイスのビジネススクールIMDが出した「2020年版世界競争力ランキング」で日本の順位は過去最低となる34位に沈んだ。19年版の30位からさらに後退した。

日本の競争力低下に歯止めがかからない
出所)IMD 世界競争力ランキング

 同ランキングでは1992年まで首位にいた日本。その後の転落で特に足を引っ張っているのが「ビジネスの効率性」の領域だ。ビジネスの効率性に限れば昨年の46位から今年は55位に順位を落とし、全63の国・地域の中でもかなりの低水準だ。世界を同時に襲ったコロナ禍で働き方の見直しなどを余儀なくされた今、下落トレンドから逆転の道筋を付けることができるだろうか。

 この世界競争力ランキングについて、IMDは「企業が持続的な価値創造を行える環境を、どの程度、育めているか」と定義し、「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラストラクチャー」の4つの要素、約300の指標から順位付けをしている。

 300の指標は政府統計などの「ハードデータ」が3分の2、残りが各国経済の関係者へのアンケートで評価を問う「サーベイデータ」だ。日本に在住しているか、在住した経験のある経営者や管理職が対象で、国籍は問わない。

 低評価だったビジネスの効率性は60の指標の3分の2がサーベイデータ。つまり、日本でビジネスに携わった人の評価がより反映されたものとはいえ、必ずしも客観的なデータではない。IMDの高津尚志北東アジア代表は「回答者は国際的な経験をしている人が多い。日本が本来あるべき姿と現実にギャップを感じている歯がゆさがランキングに反映されている」との見方を示す。

 日本でビジネスに携わった人の「企業の俊敏性」「起業家精神」に対する採点による順位は63位、「大企業の効率性」や「国の文化の開放性」は62位だ。実態を示しているかと言われれば、首をかしげたくなる読者も多いだろう。ただ、実態がもう少し上の順位だったとしても、望ましい水準にあるとも言えないのではないか。

(写真:PIXTA)

 日本を代表する企業、トヨタ自動車。5月の決算会見で豊田章男社長はコロナ禍の状況でも「私は落ち着いている」と話し、世界販売台数が2割減る中でも2021年3月期は5000億円の営業利益を確保するとの予想を公表した。しかし、そんな豊田社長でも就任直前に起きたリーマン・ショック時、その後のリコール問題への対処では「落ち着いている」などとは言えなかったに違いない。世界を覆う危機でも落ち着いていられる、強い企業体質をつくり上げるには、創業家の求心力をもってしても10年以上はかかる。トヨタは以前より強い企業にはなったかもしれないが、俊敏ではないという厳しい見方はある。

 効率性はどうだろうか。ここに来て日立製作所や富士通がテレワークを前提とした働き方、オフィスの削減などを打ち出しているが、これらの企業は日本を代表するIT(情報技術)企業。他社に先駆けて新たな働き方を示すことができてこそ付加価値を提供できる企業が、コロナ禍の今になって新しい働き方を導入しているようでは、日本全体の効率性が上がらないとやゆされても仕方ない。