全2756文字

企業決算や様々な統計などで経済の現場に表れてくる数字やデータ。それらを掘り下げていけば、思わぬ経済の姿が見えてくる。数字と取材を通して産業界の本当の姿に迫るこの連載、初回は2020年3月期の業績が出そろった自動車各社を分析する。新型コロナウイルスの影響が生産や販売を直撃し、大半の国内自動車メーカーが21年3月期の業績見通しを発表できない状況だ。そんな中で唯一、今期業績見通しを発表したトヨタ自動車。リーマン・ショック後、着実に収益性を高めてきたことが数字からもくっきり見える。 

 「私自身、落ち着いている。トヨタ自動車が成長する大きなチャンスをいただいた」。トヨタの豊田章男社長は新型コロナウイルスの流行がもたらした危機について、5月12日の決算説明会の席で穏やかな表情で述べた。2021年3月期の連結営業利益が前期比80%減の5000億円となる予想を発表したにもかかわらずだ。

 リーマン・ショックの衝撃が覚めやらない09年6月に就任した豊田社長。販売が前の年に比べ15%も減少したリーマン・ショック、北米でのリコール問題や東日本大震災、そして今回の新型コロナ。巨艦トヨタを揺るがすような「100年に1度」の事態に何度も直面してきたが、今「落ち着いている」と断言できるのは、経営者として場数を踏んできたからだけではない。

 財務諸表を読み解いていくだけでも、トヨタが置かれている状況が豊田社長が就任したリーマン・ショック時とは大きく変わり、トップが「落ち着いて」いられる背景が分かる。09年3月期は連結世界販売台数756万7356台に対し、4610億円の営業損失を出した。1台当たりにすると6万円強の赤字が出ていた計算だ。

 しかし、「必要な筋肉を落とすまでのスリム化」となった09年3月期から13年3月期と、14年3月期から20年3月期までの「意志ある踊り場」とCASE(つながる、自動運転、シェアリング、電動化)対応への変革を経た11年間で、トヨタの収益体質は大きく変わった。