全3789文字

京都先端科学大学の改革に挑む日本電産会長CEOの永守重信。その柱と位置づけているのが2020年4月に開設し、新入生を迎えたばかりの工学部だ。専門科目の6~7割は英語で授業をし、教員も外国人が3分の1を占める。従来の授業でやっていたような内容は学生が予習で学んでおき、講義は演習問題から始まる「反転授業」など、新たな教育手法にも取り組む。永守の言う「即戦力で世界と戦える人材養成」は高いハードルとともに始まった。(敬称略)

 「Hello everyone!」

 今年3月30日、京都市右京区の京都先端科学大学内の一室で、英語の挨拶が響いた。マイクを持って声を上げたのは2日後の4月1日に同大学に開設となる工学部の学部長、田畑修だった。

 この日催されたのは、工学部の第1期生となる新入生向けに、入学後の学習や大学生活の説明をするオリエンテーションである。新型コロナウイルスの感染防止のため、広い教室で間隔を空けて座った約30人の新入生たちは、いきなりの英語の挨拶に面食らった様子を見せた。しかし、田畑は結局、最後まで約3分間英語でしゃべり続けた。

 工学部は、永守が進める同大学の改革最大の目玉である。卒業時には英語と専門知識を十分に習得する。そんな世界で戦える人材を育成する大学をつくろうという永守の壮大な実験の場でもある。この日、田畑が挨拶を英語で押し通したのも「ここは違う場だと感じてもらいたい」からだったという。

3年生以上の専門科目はすべて英語で講義

 独自の学びの場をつくるために、永守は様々な仕掛けを凝らした。まず1つは、学科構成。工学部にあるのは、機械電気システム工学科の単科だけだが、学ぶのは制御やロボティクスからシミュレーション、AI(人工知能)、データサイエンスまで多岐にわたる。「もはや機械だけ、電気だけといった狭い専門分野のみでは、社会のニーズに応えられない」と田畑は言う。

永守の即戦力人材育成を担う工学部長の田畑修(写真:太田未来子)

 これからの巨大市場であるロボット、電気自動車(EV)、ドローンなどはどれもこうした技術の融合の中にある。さらには膨大なデータを収集し、分析するIoTも関わる。伝統的な機械、電気、情報学科といった縦割りの学科構成ではなく、現実に即した学びの体制にしているのだ。

 2つ目は英語。1年の前期には、英会話などの講義を週に10コマ(1コマは90分)、後期は5コマ。2年生では前後期とも同3コマずつ実施する。これ以外に数学や物理、情報処理などの専門科目でも、1年生は最低6割、2年生になると8割以上、3年生以上はすべて英語での講義になるという。英語の苦手な学生もいることを踏まえ、頻繁にテストを実施して、理解度が低ければ日本語を含めた補講を繰り返すことで英語力を高めるという。

 その一部はもう始まっている。