ちょっとばかり高くても、顧客に飛びついてもらえるような製品やサービスを生み出す──。デフレ経済の閉塞感を打ち破ろうと、こんな課題に挑んだ企業が成果を出し始めた。金融緩和だけでは物価も賃金も上がらない。シリーズ「貧しいニッポン」最終回では、企業の知恵と技術に、逆境からはい上がるヒントを探る。

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「今日はおいしいイシガキダイが入っているよ。焼き魚がお薦めだよ」。千葉県の新浦安駅からほど近い海産物居酒屋「さくら水産イオン新浦安店」。昼時になると店員と客の間で魚の品定めが始まる。店頭の水槽にはその日の朝に東京の豊洲市場から仕入れたヒラメやアジなどが泳ぐ。時にはアカハタ、カワハギといった高級魚がお目見えする時もある。

 選んだ魚をその場でさばき、刺し身、てんぷら、焼き魚、煮魚など客の好みに応じて出す「活魚定食」が、新型コロナウイルス禍以降、さくら水産のランチの目玉となっている。価格は1280円から。ビジネスパーソンの昼ご飯としては高めの価格設定だ。

さくら水産イオン新浦安店には朝に市場で買い付けた様々な種類の魚が並ぶ。その場でさばき、客の好みに応じて調理する活魚定食が人気だ(写真:陶山 勉)
さくら水産イオン新浦安店には朝に市場で買い付けた様々な種類の魚が並ぶ。その場でさばき、客の好みに応じて調理する活魚定食が人気だ(写真:陶山 勉)

 さくら水産といえば、かつてはアジやホッケ、サバなどの旬の魚を使った魚料理にみそ汁とお新香、卵が付いた500円の「日替わり定食」が売りだった。

魚選びの楽しみが価値生む

 だが、中国や東南アジアを中心に魚食需要が増えるにつれて魚の価格が高騰。異常気象などで漁獲量も不安定になり、価格が読みづらい。加えてサーモンやサバ、エビといった輸入品も為替の円安の影響で値上がりが止まらない。ワンコインランチは、数年前から採算に合わなくなっていた。

 そこに2020年、コロナ禍が追い打ちをかける。緊急事態宣言中は営業自粛で夜の売り上げをほぼ喪失。宣言が明けても夜に外食する人が減り、ディナータイムの売り上げはコロナ禍前を大幅に下回る。

 「何か手を打たねばと社内で検討した結果、ランチの中身を大きく見直し、利益を出せるようにしようと決めた」と、さくら水産の運営会社テラケン(東京・千代田)で商品開発と仕入れを担当する佐々木泰晶・営業部次長は話す。

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