世界の物価上昇の潮流から置き去りにされ、購買力を失ってしまった日本。慣れ親しんだ商品に手が届かなくなる一方で、海外資本はお買い得な日本を買いあさる。日本人が買い負ける現実がそこにはある。

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 米アップルのスマートフォン「iPhone」の発売日にはアップルストア前に長蛇の列ができるのが、日本でも恒例だ。だが、今年9月24日のiPhone 13発売日は、新型コロナウイルス対策のため来店が予約制となったことで、行列はほとんど見られなかった。

 しかし、行列が鳴りを潜めた理由はコロナ禍だけではない。調査会社のBCN(東京・千代田)が家電量販店などの販売データを基に集計した販売台数ランキングによると、10月に入り最新のiPhone 13シリーズ(最安のiPhone 13 miniで8万6800円から)の販売数減速が目立つ。

 代わりに台頭するのが廉価版のiPhone SE(第2世代、4万9800円から)だ。iPhone全体に占める販売割合は約4割だという。

米アップルは日本のスマートフォン市場で圧倒的なシェアを持つ(最上位機種の「iPhone 13 Pro Max」)(写真:Stanislav Kogiku/アフロ)
米アップルは日本のスマートフォン市場で圧倒的なシェアを持つ(最上位機種の「iPhone 13 Pro Max」)(写真:Stanislav Kogiku/アフロ)

 日本のスマホ市場におけるアップルのシェアは約7割。だが、売れるのは廉価版が半分近くという事実は何を物語るのか。2019年に総務省が発動した規制でスマホ端末を大幅に値引きすることが許されなくなった。その途端、iPhoneは高根の花になってしまった。

 日本人が最新iPhoneを購入するときに感じる「高い」という気持ち。海外の消費者たちも同様の感覚なのだろうか。

iPhoneは日本人の賃金10日分

 下の図はiPhoneを手に入れるために何日働けばいいのかを示した「iPhone指数」と呼ばれるものだ。iPhone端末の現地価格をその国の平均月収などからはじいた1日当たりの賃金で割って算出される。

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 これを主要国と比較すると、驚くべき傾向が浮かび上がる。海外では機種が新しくなるごとに指数の値が低くなる一方、日本の値は上向いている。18年発売のiPhone XSでは8.8日だった労働日数は、最新モデルの1つ、iPhone 13 Proで10日を超えるまでになった。

 なぜか。世界の他の先進国ではこの間にも、経済成長やインフレで物価や賃金が上昇した。だが、日本の物価や賃金はほとんど変わっていない。そのため、インフレを前提にグローバル基準で価格が決まる商品の場合、物価も賃金も上がっていない国・地域ではその価格を高く感じてしまう現象が起こる。iPhoneはその典型といえよう。

 価格上昇によって店頭で商品を手に取りにくくなるだけならまだいい。最近では、日本にモノが入ってこないというケースも起こり始めている。その象徴が物資の海上輸送に必要なコンテナの運賃高騰だ。

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