三菱重工業傘下の三菱航空機(愛知県豊山町)が、国産旅客機「三菱スペースジェット(MSJ)」の開発凍結を表明して約2年が経過した。三菱重工経営陣から開発再開の条件など明確な説明はなく、航空業界でも話題から遠ざかっている。ライバルのブラジル・エンブラエルは海外市場のみならず、おひざ元の日本でも顧客の切り崩しにかかっている。三菱航空機はなすすべもなく立ち往生したまま。国も新たな基幹産業として国産ジェット機の旗を振ってきただけに、今後の方向性について説明責任が求められる。
「(座席数100〜150席以下の)リージョナル機の市場回復は遅れている。環境を見ながら判断する」。11月1日、2022年4〜9月期の連結決算発表の席上、三菱重工の泉沢清次社長の歯切れはいつにも増して悪かった。
泉沢社長が20年10月、MSJの開発について「一旦立ち止まる」と表明して約2年が過ぎた。この間、米国にある飛行試験拠点「モーゼスレイク・フライトテスト・センター」は22年3月末で閉鎖。米国で飛行試験を行っていた4機の飛行試験機うち、3号機の登録は3月で抹消され、機体は解体された。
三菱航空機は3期連続で負債が資産を上回る債務超過となり、その額は22年3月期末で5647億円。財務問題が解消するめどはたっていない。

開発再開の先行き見えず
これまで明言を避け続けてきた開発の見通しについて、泉沢社長はこの日も「まだマーケットの機が熟していない。(市場環境との)相克の中で事業を検討している」という曖昧な表現に終止した。確かにリージョナル機の市場は新型コロナウイルス禍からの病み上がりの途上だが、どこまで回復すれば再開の検討に入るのか、失った資産をどう取り戻すのかといった詳細の説明はなかった。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1506文字 / 全文2253文字
-
「おすすめ」月額プランは初月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
日経ビジネス電子版有料会員なら
人気コラム、特集…すべての記事が読み放題
ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「インダストリー羅針盤」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?