海外戦略の成功で急成長を遂げ、売上高2兆円を確実にしたクボタだが、その陰で国内の農機事業は頭打ちの状態が続く。スマート農業で狙うのは成熟した国内市場における再成長だ。農業に関するデータを幅広く集めるプラットフォームに、農機をつないで自動運転させる農業版CASEともいえる取り組みで農家を囲い込み、シェア拡大を目指す。

 明治時代中期の1890年に鋳物メーカーとして大阪市で産声を上げたクボタ。創業から間もなく進出した水道鉄管で大手企業へと育つきっかけをつかんだ。第2次世界大戦後に耕運機を手始めに農業機械に参入。以来、農機と建機を中心とする機械事業と、水道事業を両輪に成長してきた。(連載の前回はこちら『収穫と同時にコメの味が分かる、クボタが描くスマート農業』)

 

 しかし、2000年代に入ったころから事業環境の変化の波にさらされる。国内では上下水道のインフラが行き渡り、人口減少も顕著になったことで、水道事業が頭打ちに。03年には創業以来初の最終赤字を計上した。

過去10年で急成長

 難局打開へ取り組んだのが、水道から機械への経営資源のシフトと、機械事業での海外進出だった。これが当たった。タイをはじめとする東南アジアの農機市場と北米の小型建機市場で確固たる地位を築いた。

 農業関係者以外にはあまり知られていない企業だが、ここ約10年の躍進は見逃せない。建機事業のライバル、コマツと比較してみよう。08年に無人ダンプトラック運行システムを開発するなど建機のデジタル化にいち早く着手したコマツ。10年度時点の連結売上高は1兆8431億円とクボタ(9336億円)の約2倍、純利益は1507億円とクボタ(548億円)の3倍近かった。

 だが、その後の収益拡大ペースはクボタがコマツをしのぐ。21年度の収益見通しは売上高こそコマツの2兆6830億円に対しクボタは2兆1500億円となお差があるが、純利益はコマツの1870億円に対しクボタ1830億円と肉薄。クボタの売上高純利益率は8.5%とコマツの7.0%を上回る。稼ぐ力はクボタが上だ。

 株式市場の評価も高い。QUICK・ファクトセットによるとクボタの株式時価総額は11月19日時点で約3兆円。コマツの2兆8000億円強を上回る。その前の日に発表したインド企業の買収が好感され、株価が上昇した。月次ベースでもっとも両社の差が大きかった08年3月にはクボタの時価総額は8000億円弱で、コマツの3割にも満たなかった。

 急成長を遂げたクボタにとって大きなチャレンジとなっているのが国内事業の復活だ。全事業を合わせた国内売上高は20年度実績で5951億円。リーマン・ショック後のピークだった13年度を7%下回る。農機事業は海外では著しく成長した半面、国内では横ばいに近い状況が続いた。

 クボタにとって、スマート農業は国内農機市場で再成長するための試みだ。農業経営を「見える化」するクボタスマートアグリシステム(KSAS)と自動農機をテコに需要を開拓し、シェア拡大を目指す。

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