政府の原子力規制委員会による審査で原子力発電所の再稼働がなかなか進まない。翻弄されている電力会社の間には、規制委が「非効率」との不満が渦巻く。規制委発足から9月で10年。原発行政の番人はどこへ向かうのか。
「議論がかみ合っていない、データ不足で規制委が(原発が安全か)適合性を判断できない場合がある。それが分かった時点で早めにフィードバックしてほしい」(中部電力)。「他の原発の先行審査を踏まえて資料を作ったのに、修正を求められた事案が多い」(東北電力)
4月以降、全国の電力各社が規制委に審査の非効率さを訴えた。規制委は「審査上の課題の認識や論点を文書化する」と応じた。一方で、9月26日に就任した山中伸介委員長の前任、更田(ふけた)豊志氏は「(結果として)格段に審査の短縮を望めるものではない」とくぎを刺した。
原発行政の番人
規制委とはどんな組織なのか。2011年の福島第1原発事故前まで原子力の規制を担った原子力安全・保安院は、原発を推進する経済産業省の一部局だった。事故後、推進と規制を分離した上で規制当局として発足したのが規制委だ。

政治からの指揮・介入を受けず、独立して権限を行使できる「三条委員会」と呼ばれる行政機関の一つ。世界一厳しい安全基準とされる日本の「新規制基準」が福島事故後に定められ、規制委はこれに電力会社が対応できているかどうか目を光らせる。まさに原発行政の番人だ。
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