東京五輪・パラリンピックの選手村で世界中のアスリートに人気となった、味の素の冷凍ギョーザ。金メダル級の活躍はギョーザだけではない。ノートパソコンの頭脳であるMPU(超小型演算処理装置)の絶縁材に味の素の「うま味」が詰まっている。

「選手村での金メダルはギョーザ」。海外アスリートが味の素の冷凍ギョーザを絶賛した(写真:味の素冷凍食品)
「選手村での金メダルはギョーザ」。海外アスリートが味の素の冷凍ギョーザを絶賛した(写真:味の素冷凍食品)

 「世界一おいしいギョーザ」。東京五輪・パラリンピックは新型コロナウイルスの感染拡大のため、バブル方式で参加選手の行動が厳しく管理された。そんな中、選手村の食堂で提供された豊富なメニューは選手らの息抜きになった。とりわけ人気だったのがギョーザで、ツイッターやTikTokなどに選手がほおばる姿が投稿され、「ギョーザが選手村での金メダル」と話題を集めた。

 国内外で食品事業を展開する世界最大のアミノ酸メーカー、味の素は100年以上前に世界で初めてうま味調味料を商品化した。甘味、酸味、塩味、苦味に次ぐ日本発の「うま味」は、今や「UMAMI」として世界で通用する。ギョーザブームは「おいしさの伝道師」である味の素の面目躍如となった。

ABF、高性能パソコン向けでは世界シェアほぼ100%

 そのギョーザに勝るとも劣らない存在感を放っているのが、味の素の半導体材料だ。リモートワークで世界的に需要が爆発的に伸びたノートパソコンやスマートフォンの頭脳にあたるMPU。その絶縁材に味の素の子会社、味の素ファインテクノ(川崎市)が手掛ける層間絶縁材料「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」が使われている。

 「ABFはしっかり調達できていますか」。コロナ禍で製造業のサプライチェーンが混乱する中、ある半導体基板メーカーはABFの調達状況について顧客から確認されることが増えた。現在、供給に支障はないが、「ABFがなければ高性能電子機器の製造が難しくなるほどの重要材料」(基板メーカー)という。ABFは、MPUとマザーボードとをつないで信号を伝えるための半導体パッケージ基板に絶縁材として使われる。絶縁性能と接続信頼性の高さ、配線微細化のしやすさが特徴で、幾層にも積み上がった電子回路間に電子を精緻に流すために必須の材料だ。正確なシェアは不明だが、高性能パソコン向けの世界シェアはほぼ100%に達するという。

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