労働に十分な対価で報いない。長時間労働をまん延させる。賃金に不満があっても丁寧な仕事をする働き手の職人気質に乗じ、設備投資や生産革新に二の足を踏む――。労働生産性で海外に後れを取った日本の製造業。DMG森精機は、こうした人を巡る考え方にも一石を投じている。43カ国・地域で働く約1万2000人の社員の賃金水準を統一し、人材争奪戦でも負けないグローバル企業を目指す。

■連載のラインアップ
(1)DMG森精機の反「ものづくり」主義、日独融合で新境地
(2)工作機械をiPhoneのように DMG森精機、デジタル革新で商機生む
(3)世界の人材争奪戦に勝つ DMG森精機、国内初任給を最大3割上げ(今回)
(4)DMG森精機社長、「ものづくり」という言葉が嫌い 垂直統合こそ力

 DMG森精機は8月4日、2023年4月入社の新入社員の初任給を引き上げると発表した。驚くのはその引き上げ幅の大きさで、博士課程の修了者では月額の基本給を11万1510円引き上げて47万5000円にする。引き上げ率は30%に達する。

 修士課程修了者は31万円(引き上げ率8.7%)、学部・高等専門学校専科卒を30万円(同10.2%)、高等専門学校本科・短期大学卒を29万円(同13.3%)、高等学校卒を28万円(同16.9%)にそれぞれ設定した。すでに入社している従業員の給与についても来春入社の新人と不公平が生じないよう7月に改定した。

 森雅彦社長は「米カリフォルニア州で博士課程修了者を採用しようと思えば8万ドル(約1070万円)、ドイツでなら6万~7万ユーロ(約820万~約950万円)の報酬を用意しなければ人を採れない」と指摘する。改定後、DMG森精機では博士課程修了・27歳の標準ケースで年収は約682万円。欧米にはまだ及ばないが、差は一気に縮まった。

 賃金水準をグローバルで統一することで、世界の人材争奪戦の中で見劣りしない企業に――。思い切った賃上げの背景には、こうした狙いがある。

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