
半導体不足による生産の混乱は自動車、スマートフォンやパソコン、夏には必須のエアコンにも及んでいる。半導体メーカーの生産や在庫の実情はどうなのか。
半導体不足は一時的な需給ひっ迫ではなく、様々な構造要因が重なって起きた。コロナ禍によって消失した自動車など製造業向け需要がワクチン普及をきっかけに急速に戻ったこと、アフターコロナを見据えたデジタル革命、世界的なリモートワークの浸透を受けてデータセンター、スマホ、パソコン向け需要が急増したこと、などが需要拡大要因である。
一方、グローバル水平分業が進んで半導体メーカーが自らの増強投資を行わなくなり、半導体受託製造会社(ファウンドリー)への生産委託が集中していた、という供給面の制約も大きい。
半導体産業はまさに需要の転換期にあり、世界の半導体市場規模は2020年の約51兆円から30年に100兆円まで拡大するとの見通しがある。こうしたパラダイムシフトの中で、半導体メーカーやファウンドリー、OSAT(後工程請負会社)、部材や原材料メーカーが仕事を分担する現在の供給体制が対応しきれなくなり、そのひずみが半導体不足という現象になっている。
「1日でも、1つでも早く製品をユーザーに供給して、現在のタイトな状況を緩和したい」。国内半導体大手、ルネサスエレクトロニクスの柴田英利社長兼CEO(最高経営責任者)は、7月29日の決算説明会で3月に火災が発生した同社主力の那珂工場(茨城県ひたちなか市)の生産回復に努めると強調した。那珂工場の製品出荷水準は8月中旬には火災前の出荷水準を超える見通しだという。
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