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 三菱重工業に再び「国産の翼」開発の大役が回ってきそうだ。防衛省が2030年代に導入を目指す次期戦闘機の開発をとりまとめる企業の有力候補になっているからだ。

 同社が開発している民間のジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)」は、機体の安全性を国が証明する「型式証明(TC)」を取得できずに量産初号機引き渡し予定が当初予定から7年遅れ、開発体制の大幅縮小を余儀なくされた。民間機開発で機体全体の設計から開発、生産、安全確保までの司令塔となる「インテグレーター」としての能力に疑問符が付いた格好だが、戦闘機開発を主導する重責を果たすことができるだろうか。

三菱重工業は、国が導入を目指す次期戦闘機の開発とりまとめ企業の有力候補に(写真は航空自衛隊が現在保有するF2戦闘機)

 3日、三菱重工は2020年4~6月期の連結最終損益(国際会計基準)が579億円の赤字になったと発表した。民間航空機向け構造部品、エンジンは売上高に当たる売上収益がそれぞれ当初計画から半減した。新型コロナウイルス感染拡大による航空機需要の「蒸発」を受けて米ボーイング向け受注が大幅に減少したためだ。同社向けの売り上げは今後の見通しも厳しい。

 「21年3月期にスペースジェット関連の損失額は1200億円となる見通し」。決算説明会で小沢寿人最高財務責任者は、スペースジェット関連費用や損失が今期の業績を圧迫すると説明した。同関連損失は20年4~6月期に688億円生じ、内訳には研究開発費200億円のほか、開発規模縮小に伴う約1000人の人員削減などリストラ費用、カナダのボンバルディアのリージョナルジェット機「CRJ」事業買収に伴って生じたのれんの減損などが含まれる。7~9月期以降も費用はかさみ、年度を通じて業績を押し下げる。

財務は悪化、純現金収支は今期も赤字見通し

 業績悪化で財務も傷む。最終赤字を受けて20年6月末に自己資本比率は3月末比1.9ポイント減り22.5%となった。一方、コマーシャルペーパーの発行などで有利子負債残高は3月末から2894億円増えて8877億円となった。今期末の有利子負債は9500億円と1兆円に迫る。利益減少で営業キャッシュフローは2236億円の赤字だったうえ、CRJ買収に資金を使い、純現金収支は3395億円の赤字になった。純現金収支は今期見通しでも4000億円の赤字と、キャッシュ不足は深刻だ。

 スペースジェットは半世紀ぶりの国産旅客機として期待されたものの、量産初号機の納入が当初目標としていた13年から6度の延期を重ねてすでに7年がたった。「TC取得がこれほど難しいと思わなかった。見通しが甘かった」。三菱重工関係者は悔やむ。ジェット旅客機の主翼や胴体など構造部品では航空機メーカーに直接納めるティア1として豊富な実績を持つ一方で、完成機メーカーとして事業化のノウハウがほとんどなかった。