かつて音楽用カセットテープやビデオテープに用いられていた磁気テープ。後発のハードディスクドライブ(HDD)などにすっかり駆逐されたかと思いきや、コンピューター用の記憶媒体として現在も顧客を獲得し、米グーグルや米マイクロソフトも手放せない存在なのだという。世界シェア7割を持つ富士フイルムの工場を訪れ、令和の時代までしぶとく生き残った磁気テープの進化に迫った。

 JR小田原駅から車で10分ほど、富士フイルムの神奈川事業場小田原サイトに足を踏み入れると、ガラスの向こうに「シャーシャー」という音を発しながら黒いテープが高速で一直線に流れていく様子が見える。

 サンプルを触らせてもらっても、ほとんど厚みを感じない。このテープが複数の滑車を経由しながらぴんと張られて流れていく間に、磁性体の含まれた液を塗布し、磁性体の向きをそろえる作業を行い、そして乾燥させる。

 別の場所では「スリット」という工程が行われていた。先ほどのテープを規格通りの幅に切る。テープが円状の刃に触れると、スルスルと切れていく。厳格な品質管理の下、こうして作られた磁気テープが世界に向けて出荷される。

富士フイルムが生産する最新の磁気テープ。およそ10センチ四方のケースの中に1000メートル以上のテープが収まっている
富士フイルムが生産する最新の磁気テープ。およそ10センチ四方のケースの中に1000メートル以上のテープが収まっている

 富士フイルムの調べによると、2020年度のコンピューター向け磁気テープの出荷量(記憶容量ベース)は世界で50エクサ(1エクサは10億ギガ)バイト以上と、その10年前の約3倍になった。

 なぜ、いま磁気テープなのか。それを探ってみると、11年に起きたある出来事にたどり着いた。

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2/22ウェビナー開催、ウクライナ侵攻から1年、日本経済「窮乏化」を阻止せよ

 2022年2月24日――。ロシアがウクライナに侵攻したこの日、私たちは「歴史の歯車」が逆回転する光景を目にしました。それから約1年、国際政治と世界経済の秩序が音を立てて崩壊しつつあります。  日経ビジネスLIVEは2月22日(水)19時から、「ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済『窮乏化』を阻止せよ」と題してウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは、みずほ証券エクイティ調査部の小林俊介チーフエコノミストです。世界秩序の転換が日本経済、そして企業経営にどんな影響を及ぼすのか。経済分析のプロが展望を語ります。視聴者の皆様からの質問もお受けし、議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。 

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