制御・計測システム大手の横河電機が、AI(人工知能)による製造業の「自律化」へ歩を進めている。化学プラントの完全自動操業や、模擬プラントの遠隔制御に成功した。システムの納入先である顧客企業で大幅な省人化や製品の均質化、経営と現場の一体化などの成果を狙う。個々のメーカーのDX(デジタルトランスフォーメーション)にとどまらず、産業間連携を後押しするプラットフォームになる可能性も秘める。

 「世界初の技術」「破壊的な技術革新」――。横河電機がこう胸を張るのは、奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市)と共同で開発した強化学習AI「FKDPP」だ。2018年以降、化学品の製造プラントのシミュレーターや模擬プラントなどに組み込み、高品質な製品を安全に製造するための操作や制御をAIが担えるかどうか、実験を繰り返してきた。

 通常、ディープラーニング(深層学習)には最低でも100万回以上の試行錯誤が必要とされる。ところがFKDPPはわずか約30回の試行錯誤で最適なバルブ操作を見つけ出したという性能の良さが売り物だ。同大学が蓄積してきた、学習回数を少なくするための知見と、横河が持つプラントへの適用という知見とを掛け合わせたことが突破口の一つとなった。

 実際に稼働しているプラントへ適用したのが、ENEOSグループの素材メーカー、ENEOSマテリアル(旧JSRのエラストマー事業部門)が抱える合成ゴム原料「ブタジエン」の蒸留塔での実証実験だ。22年1月中旬~2月下旬の35日間、トラブルを起こすことなく無人での連続操業に成功した。

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