5月中旬、愛知県豊田市にあるトヨタ自動車の工場が一時生産停止に追い込まれた。理由は車載用の半導体不足でもなければ、新型コロナウイルスに伴う中国・上海の都市封鎖(ロックダウン)に起因するサプライチェーンの寸断でもない。インフラのトラブルでこの地域への工業用水の供給が途絶えたからだ。予測不可能なトラブルに見舞われたトヨタなどはどう動いたのか。BCP(事業継続計画)の観点から点検する。

ゴゴゴー、ゴゴゴー――。周囲は不気味な重低音がこだましていた。川の浅瀬に入ったショベルカーが水しぶきを上げながら、黒い大きな土のうを持ち上げ、川の流れをせき止めていた。
5月下旬、記者は愛知県豊田市を流れる矢作川の水門「明治用水頭首工(とうしゅこう)」を訪れた。心配そうに様子を見守っていた男性は「50年ここに住んでいるけど、こんな光景は初めて。まさか底が抜けるなんて。全面復旧には相当時間がかかるようだと聞くし、地元の経済・農業への影響が心配だ」と話した。
東海農政局によると、この施設で漏水が確認されたのは5月15日。水門の上流側の水底に穴が開き、そこを通じて水が下流側に漏れ出したことで貯水できなくなった。17日には漏水が拡大した。愛知県が対外発表したのもこの日だった。
水位が下がったため、取水できなくなった工業・農業用水の供給がストップ。緊急対策として仮設ポンプが設置され、何とか取水を再開したものの、現在も工業用水の供給量は例年の5割程度に限定されたままだ。
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