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 重工大手3社が事業戦略の練り直しを迫られている。新型コロナウイルスのまん延によって、成長を託した航空や自動車の関連事業に狂いが生じ、三菱重工業、川崎重工業、IHIは中期経営計画を新たに策定したり、刷新したりする。三菱重工は複合経営を生かして火力発電をもう一段進化させようとし、川崎重工はロボット事業に期待を寄せるが、激しい競争が待ち受ける。

 三菱重工は2022年3月期から始まる3カ年の次期中計の公表を、予定していた21年春から20年秋へと半年前倒しすると決め策定作業に入った。現行中計の最終年度となる21年3月期はコロナの影響に加え、「スペースジェット(旧MRJ)」の費用がかさんで最終損益はトントンの見込みで、まさに「ゼロ」からのリスタートだ。

 現行中計策定時の18年5月時点で21年3月期の純利益は1700億円を見込んでいた。この2年でもっとも環境が激変したのは航空関連だ。

三菱重工はスペースジェットの事業化が遅れ、事業損失が膨らんでいる(写真:三菱航空機提供)

 「航空機の構造体やエンジンを伸長分野と位置付けたが、米ボーイングの減産の影響を受けた。スペースジェットは初号機納入予定が20年半ばから開発の遅れで21年度以降へ延期となった」。5月11日のオンライン決算説明会で三菱重工の泉沢清次社長は航空関連事業に吹き付けるダウンバーストの強さを説明した。

 スペースジェットは米国での飛行試験が予定より遅れた。当初の納期からすでに7年たったが7度目の延期もあり得る。事業資産を減損し開発費用と合わせて2633億円の損失を計上し、三菱重工の20年3月期の連結純利益は前の期比21%減の871億円に落ち込んだ。航空機需要が長期で戻らなければ、今後の開発機種を減らす可能性もある。

 21年3月期もスペースジェットに関係する事業で業績が悪化する。カナダ航空機大手ボンバルディアから買収する小型機「CRJ」事業で500億~700億円の減損が生じる。19年6月に製造部門を除いた保守・サービス事業を5億5000万ドル(約590億円)で買収することで合意し、スペースジェットの保守拠点に活用するつもりだった。しかしスペースジェットの事業資産の減損に伴って、CRJ事業の資産価値についても引き下げを余儀なくされた格好だ。

 CRJはすでにおよそ1900機の販売実績がある一方、最初の機種販売から30年近くたつシリーズで設計が古く、新規販売は期待しにくい。つまりCRJの代替を含めてスペースジェットが売れなければ、将来的に立派な保守拠点があっても生かしようがない。

再び火力発電に軸足