日本製鉄がV字回復を果たした。2022年3月期連結決算は純利益(国際会計基準)が12年の旧・新日本製鉄と旧・住友金属工業の経営統合後で最高を記録した。同社が業績改善への「一丁目一番地」としていた値上げの浸透が目に見えて表れたが、橋本英二社長はまだ満足していない。鉄鉱石など原料価格が円安も相まって一段と高騰する中、価格転嫁が勝負の分かれ目になる。21年に最大供給先のトヨタ自動車に見せた鋼のような強い値上げ交渉力を再び発揮できるか。あらゆる鋼材ユーザーが注目している。

 「点数をつけるなら90点」。オンラインの決算会見で橋本社長は、22年3月期の決算をこう自己評価した。

 本業のもうけを示す連結事業利益は前の期比8.5倍の9381億円。原料高騰による在庫評価益や高炉改修費などを除いた実力ベースの事業利益でも過去最高の6900億円をもぎ取った。鋼の錬金術があったわけではない。復調の原動力は不退転の決意で臨んだ値上げだ。

固定費の削減が利益拡大に直結した(写真は日本製鉄の製鉄所)
固定費の削減が利益拡大に直結した(写真は日本製鉄の製鉄所)

積み上げた限界利益

 22年3月期に同社が出荷した鋼材の平均価格は、1トン当たり11万7000円と前の期比37%上昇した。原料炭や鉄鉱石の調達コスト増を鋼材価格に転嫁する作業を推し進め、マージン(製品と原料の価格差)を確保。事業利益を2450億円押し上げた。

 主力の自動車向けビジネスで完成車の生産台数減の影響を受けたほか、国内鋼材需要全体でみても5500万トンと当初見通しを2.3%下回るなど市場環境は改善したわけではない。だが、高炉休止などこの3年間で進めた構造改革を実らせるため背水の陣を敷いた。

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