1908年にミシンの修理業として産声を上げたブラザーグループ。ミシンの国内市場は長く縮小傾向が続いたが、新型コロナウイルス禍の巣ごもりやマスク需要などを背景に出荷台数が急増した。盛り上がりを一過性にしたくない――。そんな思いからブラザーは今、若年層に熱い視線を送る。キーワードは「イミ(意味)消費」だ。

 東京メトロの明治神宮前駅(東京都渋谷区)から徒歩で2、3分。表参道から1本路地に入ると、飲食店などと並んでガラス張りの小さな作業場が見えてくる。衣料品をアップサイクル(価値の高いものへの再利用)する拠点「NewMake Labo(ニューメイクラボ)」だ。

 650人あまりが登録する無料の会員制コミュニティー「NewMake」の作業・交流の場として、東急不動産(東京・渋谷)と体験シェアリングサービス運営のSTORY&Co.(ストーリーアンドカンパニー、東京・千代田)が2021年7月に開いた。

 NewMakeでは「ミッソーニ」「プーマ」「デサント」をはじめとする有名ブランドから本来は廃棄される洋服や雑貨類などを提供してもらい、会員が衣服やかばん、人形などにアップサイクルする。会員の年齢層は5歳から60歳前後と幅広いが、20代後半など若年層が多い。

 ブラザーグループの販売会社、ブラザー販売(名古屋市)はここにミシン8台と刺しゅう機1台を無償提供している。

NewMake Laboでは、本来は廃棄される有名ブランドの衣料品などを再利用して新たな商品を生み出す
NewMake Laboでは、本来は廃棄される有名ブランドの衣料品などを再利用して新たな商品を生み出す

 これらの機材はもともと同社がショールームで展示していたものだ。ショールームのレイアウト変更に伴い倉庫に眠ることとなった機材を有効活用した。いずれも家庭用の中でも上位品。利用者からは「こんな縫い方できるんだ」「ミシンが買いたくなった」といった満足の声が寄せられる。

 NewMake Laboには実際にブラザーのミシンを購入した会員もいるほどで、若年層とブラザーとの接点が生まれたといえる。

 日本では毎年、15億着もの衣服が廃棄されているといわれる。「アパレル業界も廃棄量を減らすために努力を重ねているが、世間のイメージとのギャップは大きいのが現状」(STORY&Co.の細川拓CEO=最高経営責任者)だという。