「営業のオペレーション力を生かせば、確実に収益は拡大できる」。13年にわたってトップを務めてきた日覺昭廣社長に代わり、6月から社長として東レのかじ取りを任された大矢光雄副社長。持ち味の営業力やマーケティング力を生かし、業績が伸び悩む同社を再び成長軌道に戻す考えを強調した。ただ、27日に発表した次期中期経営計画には、事業の高付加価値化にシフトする方針は示したものの、繊維のブランディングや製品価値に見合った価格をどう実現させるかの具体的な言及は少なかった。

 6月の定時株主総会を経て正式に就任する東レの大矢光雄次期社長とはどんな人物なのか。

 アパレル業界で衆目の一致するところは「パンストの大矢」「ナイロンの大矢」だろう。1980年の入社後、約20年の間、パンストやストッキングに使われる衣料用ナイロンを担当。蒸れにくさが従来比2倍、ソフトでなめらかな風合いが特徴のパンストなど用の繊維「キュープ」などの営業を任され、売り上げ拡大の立役者になった。

 パンストメーカーや商社との関係づくりだけでなく、自ら婦人服売り場や衣料品コーナーに出向き、消費者を徹底調査した。ある時には、機能性の高い医療用ストッキングの繊維を高級ファッションストッキングに転用してメーカーと新商品を開発。これが大ヒットし「働く女性のむくみを解消する」とオフィスの話題をさらった。

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