700億円の黒字から1050億円の赤字へ――。旭化成が今期(2023年3月期)の連結最終損益予想を大幅に下方修正し、同社として史上最悪の赤字を計上する見通しになった。15年に買収したセパレーター(絶縁材)事業の不振に伴い、1850億円の減損損失を計上するからだ。一見ネガティブな赤字転落だが、工藤幸四郎社長は成長への自信を語り、株価も崩れるどころか発表直後は急騰した。なぜか。
旭化成の3月8日の発表によると、巨額の減損損失を計上する直接のきっかけはセパレーター事業の資産のグルーピングの見直しだ。
同社のセパレーター事業は大きく3つの製品から成る。(1)電動車(xEV)など車載用のリチウムイオン電池用乾式セパレーターの「セルガード」、(2)鉛蓄電池用セパレーター「ダラミック」、(3)リチウムイオン電池用湿式セパレーター「ハイポア」――だ。

セルガードとダラミックは、15年8月に米ポリポア・インターナショナル(ノースカロライナ州)を約2600億円で買収して手に入れたもの。一方、ハイポアは旭化成がそれ以前から自社で手掛けてきた。従来は3つすべての事業資産をひとくくりにしてきたが、今回、セルガードとダラミックの関連資産と、ハイポアの関連資産の2つにグルーピングを変えることにした。
この変更に伴ってそれぞれの資産グループについて減損テストを実施。その結果、セルガードとダラミックの関連資産について約1850億円を損失計上することになった(繰り延べ税金負債を取り崩す関係で、最終損益の下方修正額は1750億円)。今あえてそうする経営陣の意図は何なのか。
バイデン政権に背中を押される
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