海外市場で成長探る

 国内製鉄事業を再構築する一方で、成長は海外市場で探るしかない。「ASEAN(東南アジア諸国連合)の30年の鋼材需要は19年比80%増の1億4000万トンになる」と日鉄はそろばんをはじく。

 今後の海外展開は、現地メーカーのM&A(合併・買収)を基本戦略とする。外資企業が一貫製鉄所を一から立ち上げるには膨大な時間や資金がかかり、経営リスクが大きすぎるためだ。新興国では国内産業の育成や長期的な経済発展のため粗鋼生産から加工までの一貫生産体制を整えた製鉄所が求められており、もはや従来型の下工程拠点は必要とされていない。

 この日、橋本社長は「中国やASEANで一貫製鉄所の買収や資本参加の検討をしている」と明かした。海外での粗鋼生産能力は現時点で1600万トンしかなく、これを中長期で5000万トン以上に引き上げる。国内の1000万トン減を海外増加分で補い、世界での粗鋼生産能力を現状に比べて30%増の1億トンにすることを目指す。

日本製鉄は中国やASEANで一貫製鉄所の買収や資本参加を検討する(写真はインドで買収した製鉄所)
日本製鉄は中国やASEANで一貫製鉄所の買収や資本参加を検討する(写真はインドで買収した製鉄所)

 ただ、国内から海外へのシフトにたとえ成功したとしても、日鉄は目指す山の中腹にしかたどりつかない。その先には粗鋼生産で世界首位の欧州アルセロール・ミタル、世界2位の中国・宝武鋼鉄集団などライバルとの「ゼロカーボン・スチール開発競争」が待っている。

次ページ 「誰が一番先か。当然、日本製鉄である」