今連載の最終回は、2022年、創業100年の節目に旭化成のトップに就いた工藤幸四郎社長のインタビューをお届けする。就任後、中期経営計画を策定した際、工藤氏は「野武士」「進取の気風」「アニマルスピリット」といったメッセージを強調した。その背景には「『失敗を恐れずにチャレンジする』という旭化成のDNAが欠けてきているとの不安があった」と打ち明ける。

■連載ラインアップ
ラップ、住宅だけじゃない旭化成 「絶対無理」でもまく成長の種
ノーベル賞企業・旭化成、事業の新陳代謝を可能にする3つの経営術
・「花開いてなくても辛抱」 旭化成・工藤社長が語る経営者の眼力(今回)

工藤幸四郎(くどう・こうしろう)氏
工藤幸四郎(くどう・こうしろう)氏
旭化成社長。1959年生まれ、82年慶応義塾大学法学部卒業、旭化成工業(現・旭化成)入社。2016年旭化成上席執行役員、19年常務執行役員などを経て、22年から現職。旭化成創業の地である宮崎県延岡市出身(写真:加藤 康、以下同)

偽造品対策の「Akliteia(アクリティア)」や、食農分野をターゲットとした「Fresh Logi(フレッシュロジ)」など、次々に新規事業を生み出す鍵は何でしょうか。

工藤幸四郎・旭化成社長(以下、工藤氏):我々は常に社会課題とどう向き合うかを考えています。ただ、業務を抱えている人間がそれを一つひとつ考え、解決していくのはなかなか難しい。

 そこで、研修制度の中に「新しいビジネスをどうつくり上げられるか」を具体的に考える機会を用意しているんです。その中から出てくるアイデアの中に面白いものがあれば、「じゃあやってみよう」「自分もやってみたい」というふうに人が集まってくるのです。

 これは旭化成の特徴でもあるんですけど、垣根が低いというか、会社がダイバーシティー(多様性)そのものなのです。様々な事業経験をしている人がいるということ。極めて新鮮な発想で新規事業に対峙できて、今までの延長線上じゃないアイデアが出てくることが、旭化成のベーシックな特徴としてあるんですね。

「熱意」があるか

社会課題の解決に役立つ可能性のあるアイデアを出そうとすると、ある意味、際限がなくなってしまいませんか。旭化成として事業化を目指すにあたって具体的にどう的を絞っていくのでしょうか。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り4121文字 / 全文4948文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「インダストリー羅針盤」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。