旧日立化成を約1兆円で買収した旧昭和電工が1月、統合新会社レゾナック・ホールディングス(HD)として新たなスタートを切った。大胆な構造改革を進める高橋秀仁社長は17日の発足説明会で、総合化学からの脱却と半導体・電子材料事業への集中を宣言した。だが、高橋社長は「6割の社員は変革に戸惑っている」とも指摘。社内の融和と士気向上が腕の見せどころとなる。
「ようやく世界で戦うエントリーチケットを得た」。レゾナックHDの高橋秀仁社長は17日の発足説明会でこう力を込めた。
旧昭和電工と旧日立化成の経営統合で発足した同社。昭和電工が2020年、「小が大を飲む」形で買収しただけに「あまりにも重たい買い物」(化学大手首脳)と冷ややかな目も向けられたが、一方で同社は鉛蓄電池やアルミ缶といった不採算事業を次々と売却。事業ポートフォリオを大胆に入れ替え、日立化成とのシナジーが多く見込める半導体・電子材料事業を軸にグローバルで戦う体制を整えた。

世界トップクラスの製品多く
同事業は、特に半導体の後工程向けの材料で、ダイボンディングフィルムや銅張積層板といった世界シェア1位や2位の製品を多く抱える。半導体の前工程では回路の微細化が物理的限界を迎えつつあるのが実情で、半導体の一段の高機能化には後工程での実装技術の進歩が鍵とされており、レゾナックHDにとっては追い風と言える。
だが、足元の株価は2100円前後と、買収報道が出た19年11月下旬(3000円程度)を下回っている。22年11月に22年12月期通期の連結業績予想を下方修正。中でも“看板”に掲げる半導体・電子材料で、製品需要の低迷を受けて部門営業利益見通しを600億円から450億円へと、150億円引き下げたことが株価の重荷となっている。

市場では「半導体・電子材料については需要が回復すると見込まれる23年後半にかけて事業環境も改善に向かうだろう」(SBI証券の澤砥正美シニアアナリスト)との見方もあり、悲観一色ではない。さらに、次世代通信規格「6G」向け半導体新材料の開発に向けた産学連携プロジェクトを立ち上げるなど、中長期的な成長の種もまいている。黒鉛電極や石油化学(石化)、基礎化学品といった旧昭和電工時代の主力事業から得たキャッシュは、半導体・電子材料に投入するとの姿勢も明確にしている。
石化事業を軸とする総合化学からスペシャリティーケミカルへ――。大胆な決断を形に変えていくための施策は着実に進んでいるように映る。だが、大変革を成功裏に導き、レゾナックHDを持続的な成長軌道に乗せるためには、2つの“再構築”が避けられない。
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